tadashi133’s diary

実用エッセイや、趣味のエッセイを連載。

架空賢者の名言 スーパーヒーローを育てた“心のビタミン” 【その30】メーテル

例の「お腹をすかせた人たち」には、気をつけるのよ。

メーテル銀河鉄道999』に登場)                      

 

 1978年放送開始のテレビアニメ『銀河鉄道999』(東映動画)の舞台は、未来の地球です。

 

 貧しい家に生まれた少年・星野鉄郎は、機械伯爵という悪人に母親を殺されてしまう。機械伯爵は貧しい人間を銃で撃ち殺し、はく製にするという悪逆非道な人間だった。その時、謎の美女・メーテルに助けられ、機械伯爵に複数を果たす。

 鉄郎はメーテルとともに、永久に生きられる「機械の体」をくれるという星に向けて旅立つことになった。鉄郎たちが乗り込んだのは大昔の蒸気機関車そっくりの形をした宇宙船・銀河鉄道999(スリーナイン)。列車は宇宙の様々な星に停車しながら、終着駅を目指すのだった。

 

 途中で立ち寄る個性的な星々と、そこでの奇妙な冒険が、この物語の面白さです。

 

 「トレーダー分岐点」(前・後編)というエピソードがあります。

 

 惑星トレーダーは、銀河鉄道の各路線が交差する場所。この星のレストランに入った鉄郎は、大好物の「ラーメンライス」を注文。ところが、レストランの窓にへばりつくようにして大勢の貧民が、うらやましそうに鉄郎たちを見ているではないか。鉄郎はメーテルのおかげで銀河鉄道の無料パスや支給金をもらえる身分なのだが、そうでなければ自分だってまちがいなくあの人たちと同じだと思った鉄郎は、「ごちそうしてあげようよ」とメーテルに提案する。

 

 すると意外にもメーテルは「ダメよ」と制止します。

 

 貧富の差を見せつけられて食欲のなくなった鉄郎は、メーテルとともにホテルへ。でもやはりお腹がすいた鉄郎は、一人で食事に出かけることにしました。そのときメーテルが鉄郎にかけた言葉が、冒頭のセリフです。

 

 隠れるように街を歩き、周囲に誰もいない食堂を見つけ、ラーメンにありつく鉄郎でしたが、その時、店の裏口から「すみません、残飯を分けてください」と言って女が顔を出しました。店主にわずかな金を渡した女は、店の裏のゴミ箱をあさります。でも、他の貧民たちが持って行ったらしく、めぼしい物はありません。その、花子という名の女に鉄郎はラーメンをご馳走するのでした。女は鉄郎の優しさに心から感謝します。

 

 ところが、その直後、店内に別の男がやってきて、食べ物を注文し、店主に「代金は、その親切な坊やが払ってくれますよ」と言うのです。「そんなバカな」とつぶやく鉄郎に、男は「アンタはその女におごってやったじゃないか。1人だけ親切にするなんておかしい」と当然のように反論します。鉄郎が承諾すると、男は店の外にいる者たちにも声をかけます。店内になだれ込んだ貧民たちは我先に料理を注文し、銀河鉄道から支給された大金も、またたくまに底をついてしまいました。しかも、遅れて来た男たちは「もう金がない」と言う鉄郎をにらみつけ、「どうしておごってくれないんだ。もっと金を持ってるはずだ!」と詰め寄ります。逃げ出す鉄郎。しつこく追ってくる男たちから鉄郎を助け、かくまってくれたのは花子でした。

 この後、物語は花子をめぐる切ない展開になっていきます。

 

 貧しい人に分け与えるのは善いことです。花子のように、残飯をもらうほど落ちぶれても、必死に働いて得たわずかなお金を払おうとする人は支援したくなります。

 他の群衆はどうでしょうか。

 ひたすら「奪おう、もらおう」とするばかり。

 

 劇中に登場する架空の人々ですが、あさましい、残念な感じがしました。

 メーテルには、こうなることが見えていたのでしょう。

 

 世の中には4種類の人間がいます。

 

 メーテルのような、お金持ちの善人。

 機械伯爵のような、お金持ちの悪人。

 花子のような、貧しい善人。

 男たちのような、貧しい悪人。

 

 たとえ花子になっても、男たちのようにはなりたくないものですね。