tadashi133’s diary

実用エッセイや、趣味のエッセイを連載。

架空賢者の名言 スーパーヒーローを育てた“心のビタミン” 【その27】

アマゾン、つらいだろうが耐えていこうじゃないか。キミはライダーだ。頑張ろう!

(立花藤兵衛 『仮面ライダーアマゾン』に登場)

 

 昭和の歴代仮面ライダーを語る時に欠かせないのが立花藤兵衛です。

 ライダー1号・本郷猛のオートバイの師匠であり、スナック「アミーゴ」のマスターであった藤兵衛は、歴代のライダたちーを温かく見守り、ともに悪と戦ってきた人。ライダーたちからは「親父さん」と慕われています。1974年の『仮面ライダーアマゾン』(毎日放送)にもオートバイの現役レーサーとして登場、山本大介こと仮面ライダーアマゾンをサポートしてくれました。

 

 ところがこの大介、南米アマゾンの密林で育った野生児なのです。悪用すれば世界征服も可能な古代インカの超エネルギー「ギギの腕輪」を悪の手から守るため、大都会・東京にやってきました。ハダカに近い格好で、日本語も満足に話せない。唯一と言ってよい日本での友達は、利発な小学2年生・岡村マサヒコだけ。悪の組織ゲドンの魔の手は日本にも迫ってきます。

 

 ある日、大介は、カマキリ型の獣人に襲われている立花藤兵衛を助けます。大介が変身した姿は、額にアンテナ状の突起、鋭いキバ、背中にヒレのついた「トカゲっぽい半魚人」「爬虫類型宇宙人」といった外見。ゲドンの獣人に噛みついたり、引っかいたりして戦う姿は、一見しただけでは、どっちが怪人なのか分からない。しかし藤兵衛はアマゾンを見て、こいつは正義の味方「仮面ライダー」だと見抜きます。

 

 カマキリ獣人を撃退した大介は、立花藤兵衛と仲良くなります。しかし、逃げた獣人は、別の場所で見知らぬ男を殺したのです。駆け寄る大助でしたが、ちょうどその時、数人の男たちが通りかかり、「大介が犯人だ」と誤解されてしまいます。日本語がしゃべれず、うめくばかりの大介を、男たちは「この人殺しめ」「バカヤロー」と罵りながら袋叩きにするのです。無抵抗で逃げる大介。(俺じゃない。俺がやったんじゃない! それなのに、誰も信じてくれない!)。そう思って悔しがるアマゾンを見て、立花藤兵衛がかけてくれたのが、冒頭の言葉です。

 無実なのに乱暴された大介の悔しさは、それでも収まりません。大介の口からは「バカヤロー。バカヤロー」の言葉が繰り返し出てきます。藤兵衛はそれを聞いて、こう言ったのです。

 

「そうだアマゾン。その気持ちだ。よーし、オレにもファイトが湧いてきたぞ!」

 

 そして、藤兵衛は大介にオートバイをプレゼントしてくれたのです。

 けれども、文明の利器を知らない大介は、バイクをこわがりました。「オレ、のらない!」「(オートバイ)キライ」と叫んで、バイクを海に投げ捨ててしまうありさま。バイクを怖がる仮面ライダーがいたのです。

 いままでの仮面ライダーとは次元の違う原始人ぶりにあきれる藤兵衛でしたが、「乗る、乗らないは別にして説明だけはするぞ」と言ってアクセルやクラッチを説明、「これはオマエよりも速いんだ。どうだアマゾン、乗りたいと思わんか? 悔しかったら、追いついてみろ!」と挑発し、自分が運転するバイクを大介に追いかけさせるのでした。

 で、その直後、マサヒコが敵にさらわれると、アマゾンは、さっき見たばかりのバイクを上手に乗りこなし、少年を救い出すのです。

 

 大介が悔しさのあまり叫んでしまった「バカヤロー」という言葉は、決して上等なセリフではありません。でも、大介を袋叩きにした者たちが言っていた「バカヤロー」が、差別と憎しみの言葉だったのに対して、大介は「負けん気」を出すために言っていたように思います。あるいは、立花藤兵衛がそっちのほうに上手に誘導しています。

 

 人間の精神エネルギーのもとになるものは幾つかあるでしょうが、そのなかに、「負けたくない」という気持ちがあるのは事実です。その気持ちをバネにして、頑張る力に変えていくのなら、肯定できる面があると思うのです。

 

 アマゾンはちょっと違う方式なのですが、仮面ライダー1号・2号・V3のベルトには風車がついています。設定では、この風車に当たる風をエネルギー源にして、ライダーは戦う。つまり、逆風が強ければ強いほど、戦う力を増してくるという、悪の組織にとっては「厄介な相手」、それが仮面ライダーなのです。

 立花藤兵衛が、大介の怒りを正義のパワーに振り向けさせたように、悔しさを発奮材料にし、高度なものや、積極的な善に昇華させることは、とても大事だと思います。