tadashi133’s diary

実用エッセイや、趣味のエッセイを連載。

架空賢者の名言 スーパーヒーローを育てた“心のビタミン” 【その9】

お前たちは愚かしくも、ウルトラ兄弟の七番目の弟になるやもしれぬレオを殺すところであったではないか。お前たちには、その男がアストラに見えるのか!

ウルトラマンキング 『ウルトラマンレオ』に登場)

 

 地球から300万光年のかなたに輝く「ウルトラの星」。

 そこは、ウルトラマンのふるさと。

 

 ここで問題です。

「地球にはあるけれど、ウルトラの星にはない職業」ってなんだ?

 

 正解は、「警察」。

ウルトラの星には(「ウルトラマンベリアル」を除いて)犯罪者がいないので、警察がいらないんです。

まあ、ウルトラ族ってある意味、「全員が警察官」かもしれませんけど。

 

 僕が子どもの頃に関連本で読んだ情報によると、もともとウルトラの星の人々は地球人とそっくりだったらしい。ところが26万年前に太陽が爆発してしまいます。未曽有の危機に直面した人々は、「ウルトラ長老」を中心に人工太陽「プラズマスパーク」を完成、危機は去りました。そして、この人工太陽から出る特殊な放射線の作用により、人々は超人類・ウルトラ族に進化したのでした(「いや、太陽が爆発した時点で全員即死じゃないの?」といったツッコみは勘弁してあげてください)。

 

 一説によると、このときの「ウルトラ長老」が、今では「ウルトラマンキング」という名で呼ばれ、ウルトラ兄弟たちからも「神」としてあがめられているそうです。

 

 ちなみに初代「ウルトラマン」の劇中で科学特捜隊のムラマツ隊長は、「人類にとって、ウルトラマンは平和のための大切な神なのかもしれん」と発言したことがあります。

 そのウルトラマンから見ても「神」に見えるウルトラマンキングは設定上、「神の中の神」だと言えるでしょう。

 

 1974年に放送開始の「ウルトラマンレオ」(円谷プロ)の主人公・レオは、ウルトラの星出身ではありません。

 

 故郷の星を邪悪なマグマ星人に滅ぼされ、逃亡先の地球で「おゝとりゲン」という名で暮らしていたのですが、星人の魔の手は地球にも伸びてきました。ウルトラ兄弟の一人・ウルトラセブンが応戦しますが、瀕死の重傷を負ってしまいます。そのときゲンはレオに変身してセブンを助け、マグマ星人を撃退したのです。以来、セブンはゲンのコーチ役となり、侵略者から地球を守ることになりました。やがて、生き別れになっていたレオの弟・アストラも戦いに加わり、レオ・アストラ兄弟は大活躍するのでした。

 

 ところが、ある日、正義の味方のはずのアストラが、ウルトラの星を攻撃、星の軌道制御に必要な「ウルトラキー」を盗んで地球に逃走したのです(第38話)。軌道を外れたウルトラの星は、地球を直撃するコースに乗ってしまいました(「300万光年も離れたウルトラの星が数日で地球に激突なんてありえないんじゃ?」という野暮なツッコミはしないであげてください…)

 

 ウルトラ兄弟は、キーを取り返すためアストラを殺そうとします。

 レオはアストラをかばい、ウルトラ兄弟の放った必殺光線を浴びて倒れてしまいました。

 そのとき、どこからともなく現れたのがウルトラマンキングです。彼は冒頭の言葉とともに、にせアストラの正体が凶悪なババルウ星人であることを暴くのです。

 

 「ウルトラマン同士の殺し合い」とはショッキングな展開ですが、悲しいことに、現実の世界でも、これと似たことは起きているのかもしれません。

 地球上では民族紛争やテロが、いつまでも続いています。

 

 現実の紛争を子供番組にたとえるのはおかしいことでしょうが、お互いに自分たちを正義だと信じている民族間の争いというのは、ウルトラ兄弟が、本来は仲間であるはずのレオ・アストラ兄弟と死闘を演じたのと似ているようにも思います。物語では、ウルトラ兄弟も正義であり、レオ兄弟も正義である。ただ、互いに誤解しているために争っているのだ」ということを見抜いた、ウルトラマンキングという「より認識力の高い存在」が現われたことで、真実が明らかになり、争いは収まりました。

 ウルトラマン同士が「倒した怪獣の数を競う」ならいいんですが、互いに争ってはたいへんなことになります。

 紛争を収めるような、もっと大きな考え方がほしいところです。

 

 さて、物語の結末はどうなったか? (このあと39話のネタバレです)

 

 駆け付けた本物のアストラとともに、レオはババルウ星人を倒します。

 ウルトラの星の軌道も正常に戻りました。

 その功績により、レオとアストラは、栄光の「ウルトラ兄弟」に加えられることになったのです。