「続きの話というのは、はじめからお話を書くより楽なのである」
(木村裕一『きむら式 童話のつくり方』講談社現代新書)
300冊以上の著作のある童話作家・木村裕一先生によるハウツー本。
人は、「落差」で感動する。
映画のセオリーでは、最初の数分以内で設定を理解させるのだそうだ。
大人向けの小説を書こうという人にも、参考になる言葉が盛りだくさんの本です。
この本で木村先生は、「設定を変えずに続編を書く」というトレーニング法を勧めておられます。
自分で物語を作る力がなくても、プロが作った設定を借りることで、比較的ラクに創作の練習ができるんですね。
いわゆる二次創作。
ある女性作家も、子どものころ、教科書に掲載されている物語の続きを自主的に書いて、先生に見てもらっていたそうです。
僕もちょっとやってみます。
僕は特撮ドラマの傑作「ウルトラセブン」が好きです。
ウルトラセブン46話「ダン対セブンの決闘」では、地球を狙うサロメ星人が、ウルトラセブンそっくりのロボットをこしらえて、本物のセブンを抹殺しようとする話がありました。そこで、この話を下敷きに、次のような話を空想してみました。
題名「ウルトラボーグ計画」
地球を狙う悪質宇宙人たちとの激闘に傷ついたウルトラセブンは、ゴース星人との最後の大決戦の後、故郷の星へと帰還した。もう、かつての地球の守護神・ウルトラセブンはいない。人類は、自らの手で地球を守らねばならないのだ。
この物語の主人公、諸星菜々(モロボシナナ)は明るく元気で、ちょっとドジな19歳の少女。地球防衛軍の見習い隊員である彼女は、防衛軍の中でも異色の仕事を任されている。
それは、「怪獣の飼育係」。
ナナは入隊したての頃、防衛軍が制圧したキル星人の秘密基地を調査する仕事に加わった。基地内を探索中に道に迷い、そこでウルトラセブンが倒したサイボーグ怪獣「恐竜戦車」の別個体を偶然に発見したのだ。この個体は怪獣保育器の中で目覚めを待つ状態だった。そして発見者のナナを、ひな鳥に見られる「刷り込み現象」によって「親」だと認識してしまったのである。「恐竜戦車2号」になつかれたナナは、怪獣の飼育係になったのだった。でもナナは、この仕事を気に入っている。ナナは恐竜戦車2号を「ガブちゃん」と呼び、可愛がって育てていた。
ある日、ナナは、地球防衛軍の上層部に呼び出される。防衛軍極東基地の地下深くの一室で、ナナはある秘密を告げられる。それは、サロメ星人の基地から見つかった「ニセウルトラセブン」をコピーした人造ウルトラセブン「ウルトラボーグ」が建造中であるとの最高機密だった。そしてナナに、「キミがウルトラボーグの操縦者になるのだ」と。「なんであたしが!?」驚き、固辞するナナだったが、「本来なら、防衛軍のエリートであるウルトラ警備隊のメンバーに頼むべきことだ。だが、キミにしか頼めない。恐竜戦車という、わが極東基地の保有する最大の軍事力の一つが、キミにだけ、なついているのだからね」。
ウルトラボーグは、ウルトラセブンに酷似した外見で、頭部に「マグネリウム光線砲」、胸部に「ライトンR30ミサイル」を装備、本物のセブンには及ばないが77万馬力のパワーを誇る巨大ロボットである。恐竜戦車と連携することで、凶悪な宇宙人や怪獣とも互角以上に戦えることが期待されている。
地球は狙われている。
宇宙にただよう幾千の星から、いま、侵略の魔の手が伸びようとしているのだ。
戦えナナ、地球の未来のために!
このようなストーリーを考えてみました。「ウルトラマン」のハヤタ隊員の息子が、ウルトラマンの去った後の世界で、ウルトラマン型の強化服を着て戦う漫画がすでにありますね。また、人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」は、もともと「ウルトラマンに人が乗ったら」という着想から始まったという説がありますので、それを参考にしました。
あなたも、自分の好きなお話の「設定」を借りて、自分なりの「続編」を考えてみてはどうでしょう。