「一つのことを 極めろ」
(桑島慈悟郎 『鬼滅の刃』に登場)
善人で努力家、誠実で責任感が強く、家族思いで、自分に厳しく人に優しい。漫画『鬼滅の刃』(ジャンプコミックス)の主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)はヒーローの王道です。
これに対し、普段は臆病なダメ人間、ちょっとしたことで大騒ぎするおっちょこちょい、しかし眠るとものすごい力を発揮する我妻善逸(あがつまぜんいつ)も、じつに魅力あるキャラクターです。
僕は善逸が大好きです。
「日頃は弱そうなのに、いざとなると大活躍」というのは、ある意味でスーパーヒーローのお約束であり、王道でもあります。
善逸の才能を見抜き、厳しく指導しつつも温かく見守り続けたのが、師匠・桑島慈悟郎(くわじまじごろう)という老剣士でした。
桑島には2人の弟子がいます。
兄弟子の獪岳(かいがく)と、弟弟子の善逸。
桑島さんの教える「雷ノ呼吸」の各必殺技のうち、
善逸は、壱ノ型しか使えない。
獪岳は、壱ノ型以外全部使える。
獪岳は、自分のほうが善逸よりも断然優れていると思っています。
でも桑島さんは後から弟子になった善逸を、獪岳と分け隔てなく大切にします。
一つのことしかできない善逸に対しても、
「泣いていい 逃げてもいい ただ諦めるな 信じるんだ 地獄のような鍛錬に耐えた日々を お前は必ず報われる 極限まで叩き上げ 誰よりも強靭な 刃になれ!!」
こう励ますのです。そしてやがて、善逸と獪岳の2人を共同で「雷ノ呼吸」の後継者に指名したのでした。
しかし、自分だけが特別でないと気が済まない獪岳は、師匠の決定に不満を募らせ、やがて闇堕ちしてしまいます。
(ここからネタバレです)
ついに鬼となる獪岳。
弟子から鬼が出た責任を取って、桑島さんは切腹します。
善逸は獪岳に戦いを挑みます。
死闘の末、辛くも勝利する善逸。
ここから感じたのは、「たいていの場合、人には無限の才能はない」ということです。獪岳のように、「何でもできる、無限の才能がある」と思える人は別として、そうではない僕たちは、自分がいちばん大事だと思うこと、最も意味を感じることを見つけて、そこに集中するのが生き筋なのではないかなあと。
自分の才能は乏しい。
あるかないか分からないぐらいだ。
でも、善逸の「壱ノ型」に当たるものが、自分にも何かあるはず。
人生の持ち時間を、できるかぎり、その「壱ノ型」に集中配分したとき、何かが起きるのではないだろうか。