僕がふさいでいるとビアンカがよく言ってた。「今日っていう日は一生で一度しかない。落ち込んでいたら損しちゃう。元気を出せばきっといいことがある」って。
『フランダースの犬』(1975年)から始まるアニメシリーズ「世界名作劇場」。
このシリーズの中で、僕は『ロミオの青い空』(1995年・日本アニメーション、フジテレビ)が大好きです。
イタリアとの国境に近いスイスの村。貧しいけれど幸せに暮らしていたロミオ少年でしたが、病気になった父の治療代を出してもらう代わりに、人買いに買われてミラノに売られていくことになってしまう。
ロミオはミラノに向かう道中、同じく人買いに買われた少年・アルフレドと出会います。アルフレドは大事なカバンをひったくられてしまうが、ロミオはカッパライを追いかけ、川に飛び込んでカバンを取り戻してあげました。
アルフレドは言います。
「僕は今日、君がしてくれたことを忘れないよ。君に何かあったら、その時は僕が君を助ける。」
ミラノに着いたロミオはアルフレドと別れ、煙突掃除夫の親方に買われるが、危険な仕事にこき使われ、ほとんど食事も与えられなかった。親方の奥さんや息子は意地悪で、ロミオにつらくあたる。くじけそうになるロミオだったが、アルフレドが教えてくれた冒頭の言葉を思い出し、「手を高く空にかざす」仕草をして元気を振り絞り、明るさを取り戻す。ロミオは次第に周囲に信頼されていくのだった。
煙突掃除夫の子どもたちは肺を病んで亡くなることもあった時代。アルフレドも、飲んだくれで気の荒い別の親方のもとで、苦しい生活を強いられます。そんな中でもアルフレドは、街の不良少年グループ「狼団」にいじめられている煙突掃除仲間の少年たちを救おうと、仲間を集め、「黒い兄弟」という同盟をつくります。アルフレドと再会したロミオも、この同盟に加わり、不良たちと対決しながら、成長してゆくのでした。
戦いの中で狼団との間にも友情が生まれていく。
実は、アルフレドは元貴族だった。だが、アルフレドの父親が持つ地位と名誉を狙う悪賢い叔父・マウリッツォから両親を殺され、愛する妹のビアンカと生き別れになっていたのだ。そして今、ビアンカはマウリッツォに捕らわれている。
黒い兄弟と狼団は手を組み、ビアンカの救出と、無実の罪をきせられて流浪の末に煙突掃除夫となったアルフレドの名誉回復のために、マウリッツォと対決することになる。その時、ロミオはスーパーヒーローのように大活躍するのだった。
皆様の楽しみのために、ここでは物語の結末を明かさないけれど、見ると心が洗われるような良質のアニメです。
それにしても、アルフレドは完璧です。
金髪の美少年。
心優しく頭脳明晰。
情に厚くて統率力があり、苦難の中でもくじけない。
しかも、ほんとうは貴公子。
それなのに謙虚。
もう、天使がこの世に降りてきたかのような人物です。
でも、そういう人って、だいたい病弱なんですよね。泳げないし。
アルフレドはみんなの幸せのために無理をし、やがて吐血します。
ロミオとアルフレドの永遠の友情に、多くの人々が涙し、本作は「世界名作劇場」の後期を代表する傑作となりました。
特に女性たちの支持が多いのがこの作品の特徴で、ロミオとアルフレドという「かわいい男の子」同士が、熱い友情で見つめ合う場面を、別の意味で解釈し、悩殺されてしまった一部の熱狂的女性ファンの方々がいたことも書き添えておかなくてはならないでしょう。
つらい状況のとき。
道が開けないとき。
客観的には何も良いことがないかのように見えるとき、人は絶望しがちです。
でも、そういう時こそ、自分で「やる気」を起こさなくてはいけない。
ロミオのすばらしさは、立ち直りが早く、いつも明るいところです。
アルフレドは、そんなロミオに、いつも勇気づけられていました。
復元力。
もう一度立ち上がる力。
これが人生を切り開く魔法の力なのかもしれません。