tadashi133’s diary

実用エッセイや、趣味のエッセイを連載。

架空賢者の名言 スーパーヒーローを育てた“心のビタミン” 【その35】蒲生譲二

ごめんよ。キミの兄さんは男らしく戦って死んだ。キミも大きくなったら、勇気のある立派な人間になってくれ。兄さんのカタキは、この俺が討つ。

(蒲生譲二『スペクトルマン』に登場)

 

 ネビュラの星の勇士・スペクトルマンの地球での名は、蒲生譲二(がもうじょうじ)。防衛組織「怪獣Gメン」の一員として、正体を隠して活動しています。茶目っ気があり、おっちょこちょいで、勇気があって。でも、スペクトルマンが現われるときには、なぜか姿が見えない不思議な男。他の隊員たちからは、そんなふうに見られています。

 

 最終回「さようならスペクトルマン」に至る前・後編は、次のようなお話です。

(この後、『スペクトルマン』最終回のネタバレです)

 

 宇宙猿人ゴリは、奥多摩の地下に秘密基地をつくり、活動の本拠地にしていました。その秘密を偶然、有名なプロボクサーのピストン木戸口(本名・木戸口一郎)がカメラに収めてしまいました。そのころ、怪獣Gメンの一人が一郎と友人だった縁で、譲二は、一郎、そして弟の二郎と知り合います。だが、その直後、ゴリの部下たちによって一郎は連れ去られてしまったのです。

 

 そのとき弟の二郎も怪我をし、病院に運ばれました。ベッドの上で彼は言います。「スペクトルマン!」。ハッとなる蒲生ですが、二郎は続けます。「こんなときにスペクトルマンがいてくれたら、きっと兄さんを助けてくれたにちがいないと思うんだ」。

 

 一郎が残したカメラから、ゴリの秘密基地の場所が分かったため、譲二は怪獣Gメンのメンバーとともに現地に急行しました。気づいたゴリは怪獣を放ちます。譲二はネビュラに変身の許可を求め、変身! 怪獣に立ち向かいます。怪獣は、ボクサーを思わせる素早い身のこなしと強力なパンチでスペクトルマンを圧倒しますが、必殺のスペクトルフラッシュによって、辛くもスペクトルマンは勝利したのです。体にはそうとうのダメージを受けながら。

 

 その後、蒲生たちがゴリの秘密基地内で発見したのは、変わり果てた木戸口一郎の死体でした。一郎はゴリに必死で抵抗したものの、取り押さえられ、手術で中枢神経を抜き取られ、それが怪獣に移植されていたのでした。

 

 スペクトルマンがいなければ、木戸口さんは殺されずに済んだんですね……」

 

 譲二は怪獣Gメンの先輩に向かって、こうつぶやきます。

 宇宙猿人ゴリとの最終決戦を前に、譲二は病院にいる二郎のもとへ向かいます。彼は、兄が殺されたことを二郎に伝え、冒頭のセリフを言うのです。

 

 出かけようとする蒲生に、「どこへ行くの?」と二郎。そんな傷ついた体で、と心配する二郎に蒲生は、「男にはね、どんなにつらくてもしなくちゃいけないことがあるんだよ。いまにキミにも分かる。さよなら」と言い残して、病院を後にしました。

 

「みんな、いい人たちだった」。蒲生は怪獣Gメンのメンバー一人一人のことを思い出し、心の中で別れをつげます。そして、ネビュラに最後の変身許可を求めました。

 

 「その傷では変身は無理だ。お前は、死んでもいいと言うのか?」と問い返すネビュラの上司に、「それが私の使命なら、命をかけても!」と答える譲二。

 

 これが、地球人・蒲生譲二として最後の変身であることを痛切に感じた彼は、水面に映った自分の顔を見て、「もう、この顔とも会えないんだな」とつぶやき、そして一瞬の後、スペクトルマンに姿を変え、ゴリとの戦いに赴くのでした。

 

 死闘の末にゴリを倒したスペクトルマン。そこに駆けつけてきたのは、怪獣Gメンの隊員たちと、二郎少年でした。すでに二郎はスペクトルマンの正体に気づいています。「大きくなったら、蒲生さんみたいな人になります!」と誓う二郎。スペクトルマンは、優しく彼の肩に手を置き、宇宙に向けて帰還していきました。

 

 スペクトルマン=蒲生譲二という男は、責任感の塊です。

 

 自分が知らないうちに起こった一郎の死を、「ゴリのせい」ではなく「自分の責任だ」と受け止める。地球を防衛するために自分が存在するのだから、何がどうなっていようと、誰が悪かろうと、すべては自分の責任なのだ。死を賭した戦いを前にして、少年を温かく励ます。そして、「使命を果たすことが自分のすべてである」という態度で、迷うことなく戦う。

 

本当に、お手本にしたいスーパーヒーローです。