戦うときは、相手の力をよく確かめるのだ。そうでなくては生きてはいけぬ!
(大猿 『サスケ』に登場)
光あるところに影がある。まこと栄光の陰に数知れぬ忍者の姿があった。命をかけて歴史を作った影の男たち。だが人よ、名を問うなかれ。闇に生まれ闇に消える、それが忍者の定めなのだ!
これは1968年放映のテレビアニメ『サスケ』(TCJ)のオープニングナレーションなんですけど、子ども番組とは思えないシブさです。
主人公のサスケは、あどけない少年。
彼は忍術を大猿という名の父に教わっています。
ある時、父子は狂之助という武芸者に命を狙われることになりました。
剣の達人である狂之助の攻撃に大猿は苦戦。
大猿は一流の忍者ですが、相手は剣術使いであるため、刀で斬りあえば相打ちになる。そう読んだ大猿は、忍者が得意とする手裏剣を連打。だが、手裏剣は狂之助の剣によって、ことごとく、はじき落とされてしまいます。
「恐ろしいやつだ。手裏剣も効かぬとは!」驚く大猿。
狂之助はサスケを捕らえ、縄でしばって大猿を脅します。手裏剣は通じない。剣でも倒せない。どうすればいいのか。
大猿は必死に思いをめぐらせます。
やがて大猿は狂之助の前に現れます。「無益な争いはやめよう」と説く大猿。狂之助は耳を貸さず、問答無用でサスケを殺そうとする。そこで大猿は、たった一つの手裏剣を打ったのです。
次の瞬間、狂之助は絶命します。
何が起きたのでしょう?
手裏剣は効かないはずなのに。
実は、大猿が投げたのは大人の肩幅ほどの超大型十字手裏剣だったのです。
「風車」と呼ばれるそれは圧倒的な質量で、払いのけようとする剣を強引に押し切って狂之助を倒したわけです。
「手裏剣は刀ではじき飛ばせるものだ」という「常識」に寄りかかっていた狂之助は、忍者の変幻自在な創意工夫の力に敗れたのでした。
大猿がサスケに教えたのは、「相手の力をよく確かめ、戦い方を変えよ」ということです。そして、「一見、解決不能な問題にも、解決策はあると思って考え抜くこと」の大切さです。
この考え方は、現代のビジネスなどにも通じることでしょう。
ある問題が出たとき、「これをどう解決するか」を考える。
「意外な解決方法がないか」を考えてみる。
たとえば、台風でリンゴが落ちてしまったら、普通は大損害。でも、落ちたリンゴを「ジャム」にして販売し、儲けた人がいます。
売れ残りの食品を、「ペットフード」として売った人もいます。
形の悪い野菜は安くしか売れませんが、通常価格以上の値で売った人もいます。ひと手間加えて、「カット野菜」にしたのです。
大猿は小さな手裏剣を大きいものと取り換えることで強敵を倒しました。この「大きくしてみる」というのも問題解決に役立つ発想法の一つです。
「味の素」には、「お客さまに味の素をもっと使っていただくにはどうすればよいか」と考えた結果、容器の蓋にある穴を大きくしたところ、売り上げが倍になったという伝説的なエピソードがあります。
「小さくする」のもいい。1955年、糸川英夫氏は、国産ロケット第一号「カッパーC」の発射実験を行いました。といっても、わずか23センチ、直径1・8センチの極小ロケットでした。発射前の秒読みを見た見物人からは「何をおおげさな」という声がもれたそうです。
当時はロケット燃料は液体が当たりまえでした。固体燃料のほうが輸送と保管に便利なのですが、固体ロケットの打ち上げ技術を確立するには、およそ百回打ち上げてデータをとる必要がありました。外国勢は、同じロケットを百回も作って打ち上げる手間と費用を考えてためらっていたが、糸川博士は「データをとるだけなら鉛筆の倍ぐらいのサイズで十分いける」と考えて実験を重ね、ついに1970年、日本初の人工衛星「おおすみ」を、個体ロケットで打ち上げることに成功します。
「大きくしたら?」
「小さくしたら?」
「用途を変えたら?」
「逆にしたら?」
「組み合わせたら?」
とにかく、あきらめたら終わりです。