tadashi133’s diary

実用エッセイや、趣味のエッセイを連載。

架空賢者の名言 スーパーヒーローを育てた“心のビタミン” 【その21】

踏ん張りなさい! 根性見せなさい!             

(小沢澄子警部 『仮面ライダーアギト』に登場)

 

 仮面ライダーと言えば改造人間。いったん改造されたら、もとの体には戻れません。昭和の仮面ライダーは、そういう苦悩を背負って戦っていました。

 

 平成の仮面ライダーシリーズ『仮面ライダーアギト』(2001年・テレビ朝日)には、3人の仮面ライダーが登場します。「アギト」・「ギルス」・「G3」の3人のライダーが、それぞれの立場で怪人(アンノウン)と戦いつつも、運命に翻弄され、時にはライダー同士で戦ったりするような複雑なストーリーが用意され、幅広い年齢層に支持されました。

 

 主人公の一人、「仮面ライダーG3」は、警視庁の若き特務刑事・氷川誠が変身した姿です。ただし、改造人間ではなく、特殊装甲強化服を装着することで常人の10倍のパワーを発揮するという設定。デビュー当時の要潤さんが演じていました。

 

 普段はふつうの人間。しかし、怪人が現れるや強化服を着用、専用のバイクで現場に急行します。作戦室を兼ねたトレーラーが現場付近に同行、G3の視界をモニタリングしつつ、上司の小沢澄子管理官が無線を通じてG3に指示を出すのです。この小沢さんという若くて気の強い美女の横には、尾室くんという温和な巡査がサポート役でついています。

 この3人の警察官が一組になって「G3ユニット」と呼ばれ、強化服「G3システム」を運用しているという、やや、回りくどい設定です(でも、そこがいい)。

 

 とはいえ、このG3、実に弱い!

 

 いや、強いけど、怪人のほうがもっと強いので、殺されないのが精一杯。果敢に奮戦するものの次々に強化服のパーツが損傷。バッテリー切れで動けなくなる。そこにやってきた仮面ライダーアギトによって怪人が倒され、あやういところで命拾いする場面もありました。

 

 でも、その回りくどい登場の仕方や、負けそうで負けない、でもやっぱり負けそうな、手に汗握るギリギリの戦いぶりが、僕を含めて視聴者に好評だったようです。

 

 さて、氷川誠はもともと、G3の装着員に予定されていたわけではありませんでした。彼は香川県警の所属だったのですが、ある事情から、急きょ、G3の装着員に抜擢されたのです。

 そして、本来、G3の装着員になるはずだったのが、警視庁の若きエリート、北條透でした。氷川に出番をとられたことへのやっかみから、北條は氷川に冷たく当たります。怪人の攻撃によりG3システムが損傷、修理に時間がかかっている間に、暗躍する怪人によって、さらなる犠牲者が出たことがありました。北条は、このときとばかり氷川を責めます。お前が無能だからG3を傷つけた。それで被害者を救えなかったんだ、と。

 落ち込む氷川。「装着員は僕でいいんでしょうか…」とつぶやく氷川に、姉御肌の小沢さんは、「バカねえ。正しいか間違ってるかなんかどうでもいいの!」と語り、男なんだから思った通りにやればいい、という趣旨の言葉で励ますのでした。

 その後、2体の怪人が出現します。

 怪人は幼い女の子に襲いかかりますが、警察官が少女を抱きかかえて怪人から逃げています。しかし、もう逃げきれません。2人の命は風前の灯。

 怪人の腕が迫ります。

 その時、力強い腕が怪人を止めました。

 仮面ライダーG3が間に合ったのです。

 しかし、怪人は2体。苦戦するG3。

 氷川の命が危ないから離脱命令を出すべきだ、と尾室。

 そのとき小沢さんが叫んだのが、冒頭の叱咤激励でした。

 

「氷川君、踏ん張りなさい! 根性見せなさい!」

 

 もとより、ここで逃げる氷川ではありません。

 少女たちを守るべく、全力をあげて戦います。

 駆けつけたアギトが怪人の片方を引き受けてくれたことで活路が開けました。携帯火器を取り出してかまえ、発砲するG3。

 数秒後、怪人は爆砕されたのです。

 

 これと対照的なのが北條。彼は後に一時期、G3の装着員になるのですが、怪人が手ごわいと見ると急に怖くなり、小沢さんの「まだまだこれからよ!」の声も無視して強化服を脱ぎ捨て、逃走してしまいました(その後、G3の装着員を解任)。

 

 強大な力を持っているからライダーなのではない。

 逃げないからライダーなのだ。

 氷川誠が見せた「不屈の闘志」こそ、仮面ライダーの証明と言えるでしょう。