「読者の読みたいことを書くのがお前の仕事だろ? もっと読者になって書いてくれ」
(神山典士『150冊執筆売れっ子ライターの もう恥をかかない文章術』)
神山先生はノンフィクション作家。大矢壮一ノンフィクション賞などを受賞。作文教室やエッセイ講座で、子どもから社会人まで約800人の受講生を指導しています。著書が青少年読書感想文課題図書になったこともあるそうです。
冒頭の引用は、27歳で駆け出しライターだったころに、編集者から言われた言葉だそうです。他にも「君の意見なんか読者は聞きたくないんだ。ただ事実だけが読みたいんだ」とも言われたとか。
極端な言い方だと思います。でも、大事な内容を含んでいるのではないでしょうか。
特にノンフィクションの場合、読者を引き付けるのは「事実」です。作者の見方や考え方に興味を持つこともあるでしょうが、まずは「興味深い事実」をこそ読者は読みたいのです。
あなたは、次の2つのうち、どちらを食べたいですか?
【1】三ツ星レストランのシェフが調理した魚肉ソーセージ
【2】普通の奥さんが調理した最高級の和牛ステーキ
僕の場合、【1】にも興味はありますが、どちらか一方を選ぶなら【2】ですね。
素材が段違いだと、テクニックでは追い越せないのです。
読者が読みたくなるような素材を仕入れることが第一。
あとは、読みやすく効果的に表現する腕も大事です。
読者にとって面白いか、読者の心にささるか、これを無視して、書きたいように書くだけだと、なかなかうまくいきません。
神山先生がエッセイや自分史を教えている受講生の文章には、「読みにくい文章」「何を言いたいのかわからない文章」「上から目線の文章」が目立つそうです。
書きたいように書くだけで、「読者がどう感じるか」を考えていないことが原因です。
会社の上司や先輩、あるいは学校の先生が押し付けてくる「上から目線のお説教」って、イヤなものですよね。
ところが、自分が聞き手の時には「イヤだな」と感じることを、自分が話し手や書き手になったとたん、そのままやってしまうことがあります(僕自身がそうなので、自戒の意味をこめて書いています)。
「読者になって書く」。大事なことですね!