たった1行の言葉で、それまでさほど売れなかった物が、爆発的に売れていくことは実際にあるのです。
(川上徹也『1行バカ売れ』角川新書)
著者はコピーライター。短いフレーズで人の心をつかむコツについて、豊富な事例をあげて解説しています。たとえば、この事例。僕なりに要約して紹介しましょう。
ニューヨーク・マンハッタンにある博多料理専門店「トントン」。メニューに博多名物明太子を「タラのたまご」と書いて載せたら、別々のお客から3件「気持ち悪い」と苦情が出たそうです。しかも、注文していないお客から。でも、お客様の要請には応えたいと、次のように書き換えたそうです。
「博多スパイシーキャビア」
とたんにバカ売れ。「うまい。これはシャンパンに合う」と大人気に。
これを読んで以来、僕も家族も、明太子を「博多スパイシーキャビア」と呼ぶようになりました。
さらに事例を。
北海道北見市にある「北の大地の水族館」は、水槽の表面が凍ってしまうのが最大の弱点であり、悩みでした。ところが、次のように宣伝したのです。
「世界初! 凍る水槽」
最大の弱点を逆手にとって、凍った水面の下での魚の様子を見られるようにしたわけです。これによって一大観光スポットになったのでした。
東京・上野にある「二木の菓子」では、ある時、全店舗で「あんドーナツ」に次のようなPOPを付けたところ、どの店舗でも、飛ぶように売れたとか。それは、
「今となっては素朴でも、昔はこれが贅沢だったんだ!」
高齢のお客さんが共感してくれたようです。
ところが、ある1店舗では全然売れなかった。調べてみると、その店舗では店員さんがPOPを自分の判断で書き直していました。それは、
「昔懐かしい味、今も昔も変わらぬ贅沢を」
あれ? こっちのほうが、なんだか上品でマイルドですよね。
でも、売れなかった。
なぜでしょう?
それは、「表面的な建前」であり、お客にとっては「自分と関係のない情報だ」となって、少しも響かないからです。
この本では、「バカ売れ」のために「得することを提示する」「常識の逆を言う」「重要な情報を隠す」など、さまざまな技法を取り上げていて勉強になります。
ブログの文章でも、何かの応募作でも、読者が「自分に関係あることだ」と思ってくれたり、何らかの「驚き」を感じてくれたら、読んでもらいやすくなるでしょう。
プロのコピーライターさんが書いた本を見かけたら、1冊は読んでおいて損はないのではないでしょうか。