日本は世界で最も作家デビューしやすい国です。
なぜかと言えば、多彩な新人賞があるからです。その気になって探せば、応募先はたくさんあります。
自作の小説やエッセイを出版社に送っても、実は読まずに捨てられていることが多いそうです。編集者は多忙ですし、しろうとの人から突然おくられてきた原稿を丁寧に読んで、返事をする時間はとれないし、また、その義務もないわけです。
だから、締め切りを守り、規定に合った原稿なら必ず目を通してもらえる新人賞応募は、それだけでもデビューにつながりやすいと言えるでしょう。
とはいえ、いきなり原稿用紙何百枚ぶんの原稿を書くのは難しいですよね。
この本では、人気作家である冲方丁先生が、具体的な練習メニューをあげてくださっています。
たとえば、「四コマ漫画を小説化する」という練習法。
四コマ漫画は起承転結があって、絵とセリフから成り立っています。
これを文章だけで表現してみるのです。
「適当に膨らませてつなげれば自然と小説になったりしますので、お試しください」と冲方先生は述べています。
一つやってみましょう。
大正から昭和初期に描かれ、日本の四コマ漫画の始まりとも言われている『ノンキナトウサン』(麻生豊)という作品があります。丸顔に丸メガネ、団子鼻のトウサンが、ちょっとまぬけな言動をするというギャグ漫画で、映画化もされるなど、当時たいへん人気があったようです。ちなみに現在では著作権が消滅して、パブリックドメインとなっています。
題名『小説版 ノンキナトウサン』「ニシンの巻」
「またニシンか」。トウサンと坊やはちゃぶ台を囲んでため息をついていた。
そのとき、小包が届いた。
包の中は食べ物らしい。「ありがたい。これでニシンを食べなくて済むゾ」。
開いてみると、大量のニシンだった。
他愛もない内容ですが、いちおう、掌編小説(短編小説よりも短い作品)が、ひとつできました。私は小説家ではありませんが、小説らしきものが一応、できたわけです。
でも、ニシンって、そんなにまずいのかな?
おばあちゃんからもらった「ニシンのパイ」を「いらない」と言ったアニメ『魔女の宅急便』の女の子のことを思い出しました。あれって、けっこう美味しそうですよね?
すみません、話を戻します。
書店に行くと、映画を元にした『小説版 ゴジラ-1.0』などといったノベライズ本がありますが、四コマ漫画を「原作」にすれば、誰でも、かんたんにノベライズができるわけです。
こういう練習を大量にやっていくとどうなるか。
物語の作り方が分かってくるようになるのです。
四コマ漫画を小説にすれば「学べること甚大」だと冲方先生は述べています。
ぜひ、やってみてください。