断られた出版社が、述べ三十社だもんな。
(横田濱夫『しろうとでも一冊本が出せる24の方法』祥伝社黄金文庫)
とても実践的な本です。まったくの素人だった横田先生が、1冊の本を商業出版するまでのご苦労と、その過程で身に着けた「本を出す方法」を赤裸々に描いています。
現在ほどインターネット社会ではなく、「出版社への持ち込みや原稿送付」が中心だった時代の話なので、やや古くなっている面もあると思いますが、原則は今でも変わっていないと思います。
この本で僕が最も参考になったところは、この言葉です。
◇(素人は)ブランドの無さを、特定分野における情報量の豊富さで補うしかない
無名の素人が書いた原稿は、「有名な○○先生の本だから買おう」というのが使えません。「どんなテーマを、どんな切り口で料理しているか」という勝負になります。だから、何かについてとことん調べ、読み、できれば体験して、情報を蓄積することが大事でしょう。
「一定の勉強量によって知識的にたまったもの」ができてきて、そこに「世に問うだけの付加価値のある考え方」が加わってきたときに、本になります。
横田先生は、次の特長がある原稿は本になりやすいと言っています。
【1】共感性
【2】新知識性
【3】エンターテインメント性
【1】は、読者が「うん、そうだそうだ」「わかるわかる」とうなずいてくれるような「あるある感」です。日常のワンシーンや、ちょっとしたエピソードを書き留めておくと、ネタとして使えます。
【2】は、【1】とは逆に、読者が知らないこと。それを知ることによる驚きや、得した気分になるような内容です。読者が「この本を読んで勉強になった」と思える部分です。
【3】は面白さです。予備校の人気講師と、そうでない講師の違いはココです。同じ文法や公式を扱っていながら、生徒の心をつかんでいる先生は、面白くなる工夫をしています。でも、「自分は人気講師じゃないし、ダメ講師だ」という人はどうすればいいかというと「人気講師の授業をたくさん視聴して、真似られるところから真似ていく」というのが答え。お手本にしたい本を繰り返し読んで、その面白さを自分にインストールしていくのです。そうすれば、これまでとは違ったアウトプットができるようになるはず。