「データがわれわれに語りかけてくる」
安売り店に行くと、名刺サイズの白いカードの束が100円ぐらいで売られていることがありますね。僕はこれを愛用しています。
たとえば、「話し方」について勉強したいと思った場合、図書館に行って、『話し方入門』『スピーチ術』『人前であがらずに話せる本』などといったタイトルの本を借りてきます。
そういう本をパラパラと読みながら、「これは使えるな」と思った事例や、話し方のコツをカードに書き写していきます。
そのとき、カードの余白には、出典(本の題名・著者・出版社名)を書きます。
1冊の本から、何枚かのカードができるでしょう。
さらに、テレビを見ていて、「この芸人さんのセリフに笑ってしまった」「このスポーツ選手の受け答えはみごとだな」などと思ったら、カードにメモしておきます。
できれば日付や番組名も書きます。
職場の同僚で話し方が上手い人がいたら、その特長をメモします。
受講したセミナーで、講師の話が眠くてつまらなかったら、「なぜ、つまらないのか」を考え、「こうしたらいいのでは」という改善案をカードに書きます。
結婚披露宴に呼ばれたとき、新郎の上司が新郎を褒めないで会社の宣伝ばかりを延々と話しているのを聞いたら、それもメモ。
話し方をテーマにしたネット動画を見て、重要なテロップをメモ。動画の出典も書き添えます。
「話し方」について意識しながら、カードを持ち歩く生活を何か月か続けると、いつの間にか、カードが何十枚とたまってくるでしょう。
そうなった段階で、カードを「百人一首」のカルタのように床に並べてみましょう。
無心になってカードを眺めていると、「このカードと、このカードは関係があるな」という「つながり」が見えてきます。
集めてきたデータが「語りかけてくる」のです。
そうして、いくつかのカードの「島」ができます。
最後に、どの「島」が前で、どの「島」が後なのかを決めます。
すると、長い論文や、本1冊分の章立てと骨子が自動的に出来上がってしまいます。
あとは、カードを順番に見ながら、自分の言葉で執筆するだけです。
この技法のことを、川喜田二郎氏の名前をとって、「KJ法」と呼びます。
だいたい300枚ぐらいのカードがたまると、軽い本なら1冊書けると言われています。数枚から十数枚もあれば、ちょっとしたエッセイを書くのにも重宝しますよ。
僕も、この技法を使って書いたエッセイがコンクールで入選したことがあります。また、本を書くときにも使っています。
「取捨選択や並べ替えが自由にできる」というカードの特長を生かした発想法であり、道具としては安価なため、手軽にできるのがよいところです。