ただ漠然と「なにか書きたい」「なんでもいいから書かせてほしい」では通用しない。
(金丸弘美『走れ! ライター独立宣言』とりい書房)
ライターズネットワーク代表の金丸先生による「ライターになる」「本を出す」ための本。1998年に刊行されているので、けっこう古い本ですが、すでにこの頃から「最近はインターネットで自分の周辺のことを書いているうちに、そのアクセス数が多く口コミで話題になって出版社の目にとまり本になったというケースもある」と書かれています。
この傾向は、ここ数十年で、ますます加速してきていますね。
ブログなどで情報発信している人は、そうでない人よりもライターや著者になりやすい時代になっています。
金丸先生自身は、「ある映画雑誌に毎回映画のことを投稿しているうちに取り上げられ、原稿依頼がきた」そうです。
もちろん映画好きの人は世の中にたくさんいます。そのなかで見いだされることができたのは、金丸先生が「映画を年100本、200本と観ていた」ことが大きかったようです。学生ならともかく、社会人になってからも映画を毎年100本ぐらい観るような人は限られてきます。
1本の映画を観るのは誰にでもできますが、それを他の人々がやらないレベルまでとことんやり続けると、面白いものが書ける人になるんですね。
映画は役者の演技、背景の美術、音楽、シナリオなどが融合した総合芸術ですから、真剣に観ると得られるものが多いでしょう。
ちょっと角度をつけて、「白黒映画だけ」「地球滅亡テーマの映画だけ」「スパイが活躍する映画だけ」を見続けるといった取り組みをしてみるのもいいかもしれない。
金丸先生は、本の書き方として、次のようなことを助言しています。要約して紹介しましょう。
◇マニアックなものよりも、誰でも知っているが、ちょっとした違う視点があるような
原稿が、本として成立しやすい。
◇初歩的なことを知らない。初歩的に答えてもらえないから質問するし悩んでいる。そ
ういう読者に向けた本を書こう。
たしかに、国民の誰もが知っている『ドラえもん』について、えびはら武司先生が、藤子・F・不二雄先生のアシスタントだったころの経験を書いた『藤子スタジオアシスタント日記 まいっちんぐマンガ道』(竹書房)は面白く読めました。ジャイアンの本名である「剛田武」は、えびはら武司先生の「たけし」からとったらしいです。
ちなみに、えびはら先生は藤子スタジオをやめた後、『まいっちんぐマチコ先生』が大ヒット。テレビアニメにもなっています。藤子先生と画風が似ているため、藤子先生が基本的に描かない「お色気路線」のマンガにしたところ、PTAから山ほど苦情が来てしまったようです。
また、何事であっても、「やり方が分からなくて悩んでいる人」向けに、超分かりやすく手ほどきしてくれるようなブログや動画は人気がありますね。