こうして書籍を出せたのも、営業をせずにお仕事がいただけているのも、「書く」ことをやめなかったから。
(いしかわゆき『書く習慣』クロスメディア・パブリッシング)
いしかわ先生は現在、フリーランスのライターとしてwebメディアの記事を書いたり、取材したり、企業のSNSの運用をしたり、といった仕事をなさっている方です。
さらに本書『書く習慣』以降も何冊かの本を出していて、今後も活躍が期待されている作家さんです。
いしかわ先生は、子ども時代、お父様の転勤でアメリカに住むことになりました。ところが「英語も話せず、友だちもできず、ただ日本に恋焦がれていた」漫画好きの少女でした。そんな中二のころ、ブログをはじめたそうです。すると、読んでくれる人が少しずつ増えてきたのでした。
大学入学とともにブログは中断しましたが、社会人になってしばらくすると再開。会社員生活をしながら日記を書き続けて3年、とくにバズったわけでもなかったけれど、ブログをポートフォリオにして面接に臨んだところ、実績ゼロでも「ライター」として採用してもらえたのです。
僕らブロガーにとって、「あこがれの星」のような方ですが、いしかわ先生の文章上達法を、ひとことで言えば、
◇「習慣」にしちゃえば、文章は勝手にうまくなる!
ということです。
いしかわ先生は会社員時代、退社後に最寄駅から自宅までの10分間の帰り道に、「暇だなあ」と思って短い日記を書きはじめました。それが、今の先生の成功の土台になっています。
平日、「駅から自宅まで歩く10分」というのが、基本的に必ず発生するとしたら、年間では200回以上になります。それを発信の時間にしていったら、「こんな文章が書けます」と対外的に伝えられるぐらいの蓄積ができます。
通勤とセットで規則的に発生する時間なので、習慣になってしまえば、自動的に続いていく。いしかわ先生は、これを「無理なく日常に落とし込めば、努力はいらない」という言葉で述べておられます。
そして「書き続けてさえいれば、自然とコツがつかめてきて、勝手に文章もうまくなって」いくのだそうです。
いしかわ先生ご本人にとっては、1日のなかで、これまで無駄にしていた「暇な時間」を活用しただけ。無理なく、自然に、楽しくやってきただけなのです。でも、そのことが、他の人々から見ると、すごい才能を持った人が大きな成果を上げていることになるんですね。
本書で僕が特に勉強になったのは、「好きなものについて書くべきだ」ということです。好きなものについて書くと、熱量が高くなり、読者にも伝わりやすいのです。ドン引きされそうな偏愛でもOK。たとえオタク全開の内容でも、多くのファンの人たちから「わかる!」と共感されたり、知らなかった人からも「こんな人がいるんだね」とコメントをもらうことだってあるそうです。
他にも、
◇書くことがないのなら、テーマに沿って、誰かから質問されたような形で書いてみる
◇「ノウハウ(知識)」なら、それを知らなかったころの「過去の自分」に向けて書く
このような実践的な「書き方のヒント」が、この本には随所にあります。
いしかわ先生はある日、疲れて一日中ベッドから起きられなかったことがあって、そのことを友だちに愚痴ったそうです。すると友だちは、こう話してくれたとか。
◇「実際にはあなたは寝ていただけかもしれないけれど、そのあいだにも、あなたが過
去に書いた記事やツイートが不特定多数の人に読まれて、勝手に働いてくれているん
だよ」
言われてみれば、そのとおりですね。
本書『書く習慣』も、いしかわ先生が書いてから1年も経った文章をネットで読んだ編集者さんから連絡をもらったのが始まりだったそうです。
時間帯や曜日など、日常の中に、ブログを書く時間を落とし込みたいところです。