tadashi133’s diary

実用エッセイや、趣味のエッセイを連載。

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その26】ドラえもんの「秘密道具」を手に入れる

 未来のことも これにかいておけば そのとおりのことが 起きるんだ。

 (藤子・F・不二雄ドラえもんてんとう虫コミックス第16巻)

 

 「ひみつ道具」は、手に入らないものばかり。タケコプター、どこでもドア、タイムマシンにアンキパン。「あらかじめ日記」もその一つで、書いたことが即座に現実になってしまうものです。ありそうもないこと、たとえば「空から雨じゃなくて、あめ玉がふってくる」と記入すると、キャンディーが降ってくるのです。上空をとぶ飛行機の荷物室のとびらが壊れ、つんであったキャンディーがばらまかれるという形で現実化します。ところが、「あらかじめ日記」の存在を知ったスネ夫がふざけて「のび太はライオンに食べられる」と書いたら、その直後に「動物園のライオンがにげた」というニュースが報じられ、絶体絶命のピンチに……というストーリーが描かれています。

 でも、この「あらかじめ日記」は実在するんじゃないかと僕は思うのです。それも、簡単に購入でき、誰でも自作できるものではないのかと。

 高名なエッセイストでイラストレーターの中山庸子先生は、著書のなかで、高校の教師だった頃の体験を書いておられます。

 中山先生は小さいころから絵を描くのが好きで、本当はイラストレーターになりたかったのに、実現できず、高校教師になったのでした。高校教師になりたくてなった人も多いですが、中山先生の場合は第一希望ではなかったわけです。望む自分になれないで落ち込んでいたところ、ある日、女子生徒が貸してくれた雑誌が、さらに追い打ちをかけてきたと言います。そこには、中山先生のかつての同級生の写真とイラストが載っていて、その同級生は若い子たちの間で相当のスターになっていることが一瞬で分かった、校舎の3階にある準備室の窓を開けて下をのぞくと、めまいがして、暗い気持ちになったそうです。

 自分よりもずっとすぐれた人を見て、憎く思うのは人間の常。

 でも、中山先生は、そこからさらに考えを進めました。

 自分は、イラストレーターとして活躍している同級生を、心から「うらやましい」と思う。それは、彼女が私にとって「なりたい自分」だからなのだ。

 うらやましいということは、「夢」があるということ。

 それなら、相手を憎むのではなく、自分も夢を手に入れればいい。

 こんなふうに考えた中山先生は、ベン・スイートランドという人の書いた自己啓発本に影響を受け、ノートに自分の夢を書くようになったそうです。彼女はそのノートを「夢ノート」と呼び、一日に何度でも手に取って眺めました。かなった時のうれしさを、まだかなってもいないのに、あらかじめ想像する。そして、実現に向けて努力する。「シャネルのバッグがほしい」「5㎏ダイエットしたい」など、わりと手近な夢も含めて、いろんなことを書き、かなった時にはピンクのハートのマークを付けるなどしていったのです。

 そして歳月が過ぎ、あらためて「夢ノート」を振り返ってみると、すでにかなった夢のマークがあまりにたくさんあることに中山先生は驚いたそうです。

 

♡『夢ノート』について書いた本を出版する

♡南青山に自宅兼事務所

♡週末はウィークエンドハウスでの生活を満喫する

 

 すごいですね。

 「イラストレーターにあこがれる無名の高校教師」だった人が、「超リッチなベストセラー作家兼イラストレーター」になってしまったのです(このことは、『「夢ノート」のつくりかた』(PHP文庫)という本にくわしく書かれています)。

 さて、この「夢ノート」ですが、文具屋さんなどで買える、ごくふつうのノートでかまいません。そこに自分で夢を書き込んで、時々ながめるだけ。お金も、ほとんどかかりません。

 でも、その機能は、「未来のことも これにかいておけば そのとおりのことが 起きる」ことになるのですから、事実上、ドラえもんの「あらかじめ日記」そのものではありませんか。

 「タイムふろしき」も「通りぬけフープ」も「ビッグライト」も手に入らないけれど、「あらかじめ日記」は手に入る。

 作家になりたい人は、いますぐ、『夢ノート』を作りましょう。それは魔法の道具『あらかじめ日記』と同じ効力を持っています。

 ただし即効性はありません。

 『ドラえもん』の「あらかじめ日記」の劣化版、『機動戦士ガンダム』で言えば量産型の「ジム」みたいな性能だと言えるでしょう(といいつつ、僕はジムが好きなんですけど)。

 だから、「作家になる」と書きこんでも、すぐに作家にはなれない。

 でも、じわじわと、確実に、作家になれる方向で動いていくのです。

 「海賊王に、オレは、なる!」と言い続けている人は、なんだかんだで、結局は海賊王への道を歩んでいくように。

 かなった状態をイメージするのが難しければ、音読するのもいいと思います。

 目標をひんぱんにインプットすると、無意識のうちに目標を実現するような行動をとりやすくなるものです。

 目標を紙に書いたり、ビジョンを絵にかいたりしておくと効果があるのは間違いないことです。僕も『あらかじめ日記』の手法を使っていたら、本が出ました。ほとんど無名の“売れない作家”ですが、どうにかこうにか、本が出るところまでは行けました。最初に夢を描いてから、10年かかりましたけど。

 

「目に見える形でかいたものは、かなり、かないやすい」

 

 これは真実だと思います。