tadashi133’s diary

実用エッセイや、趣味のエッセイを連載。

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その16】人気作の分析

 「本の内容を2ページごとに1行でまとめる」

 (岡田斗司夫『頭の回転が速い人の話し方』フォレスト出版

 

 岡田先生は、人気作家・宮部みゆき先生の240ページの本を、120行にまとめてみたそうです。すると、著者の宮部先生が「どのように読者を振り回そうとしているか、手練手管がすべて見えた」のだと述べています。

 これは、「リバースエンジニアリング」みたいなもの。たとえば、敵の優秀な戦闘機を捕獲し、バラバラに分解して内部構造を調べてみる。すると、どうやって優れた性能を実現しているのかが分かり、こちらの技術力が上がるという、そんな作業です。

 世界中の映画監督は、だいたいこうした訓練をやっているそうです。

 小説家も、気の利いた人はやっているとのこと。

 ハリウッド映画の傑作や、日本の傑作アニメなどの映像を、1分ごとに1行で表現するのもいい。こうすると、何度も見た映画でも、気づかなかった発見がたくさん出てくるというのです。

 僕も、ちょっとやってみます。

 いま手元にある、日向夏先生の痛快ミステリー『薬屋のひとりごと』(主婦の友社)の第1巻を、2ページごとに1行にしてみましょう。

 こんな感じです。

 

◇薬草を探しに森に出かけた薬師の娘・猫猫は、人さらいによって後宮に売られた。

◇そばかす顔の猫猫は下女として真面目に働き、そのうち後宮を出るつもりだ。

◇だが後宮で乳幼児の連続死が起き、先代の側室の呪いだとの噂であった。

◇呪いだとは思わない猫猫は、同僚の下女から、帝の子たちの症状を聞く。

◇調査に乗り出した猫猫は、女が、別の女を罵っている場面に出くわす。

 

 冒頭の10ページを、2ページあたり1行で要約してみました。

 僕がまとめたあらすじは、日向夏先生の芸術的な筆致とは似ても似つきません。それでも、宮中で起こる事件に主人公の猫猫が関わっていくようすが分かりますね。

 このあと、あんなことや、こんなことがあって、すごいイケメンの若き宦官との出会いもあってと、事態がどんどん進んでいきます。続きが気になる方は、この小説『薬屋のひとりごと』をお読みになるか、大人気となっている漫画版やアニメ版をご視聴ください。

 めっちゃくちゃ面白いですから。

 『薬屋のひとりごと』の場合、主人公の猫猫がすぐに登場。ひどい境遇に置かれているが、未来に希望を持っていることが語られます。しかし、そこに不審な事件が持ち上がり、猫猫は首を突っ込むことになります。そこで、2人の女が争っている緊迫した場面が描かれます。

 10ページぐらいで、完全に読者を物語の世界に引きずり込んでいます。

 「それからどうなるの?」という興味で、読者はページをめくるのです。

 こんな感じで、300ページを10ページぐらいに短縮すると、プロの「技」が見えてくるわけです。

 こんな作業を真面目に繰り返していたら、そうでない人と比べて、物語づくりの能力がアップするだろうということは、想像がつきますね。

 自分が読んで面白いと思った小説・漫画・映画を要約しながら、ストーリー展開の面白さを学び、自分のものにしていきましょう!