tadashi133’s diary

実用エッセイや、趣味のエッセイを連載。

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その17】コンスタントに更新する

 不定期にチャンネルが更新されていると、見る人には不便です。

 (HIKAKIN『僕の仕事はYouTube主婦と生活社

 

 いかにしてアクセス数を増やすか。総アクセス100億回以上のHIKAKINさんが、自分の方法を解説した本。2013年の本ですが、当時の著者のアクセス数は3億3000万回。今はその30倍以上になっています。

 もっとも、僕らのようなブログは、YouTubeとは違って基本的に文章表現中心ですから、そのままでは参考になりにくいとは思います。しかし、冒頭の言葉はブログ運営にも参考になりそうです。

 ここでHIKAKINさんが言いたいことは、こういうことです。チャンネル更新が不定期だと、ファンになってくれた人が、せっかくチェックしても、そのたびに空振りだったり、久々にチェックしてみたら何本も動画がアップされていて、話題が旬のものでなくなっていたりする。

 逆に、「月9」(月曜日9時のドラマ)のように、毎回定期的に更新されていると、視聴が習慣になりやすいのです。

 僕も、ブログを見てくださる方々のために、少なくとも週に1回は更新しようと思いました。「金曜ロードショー」のように、毎週末には最低1本、更新されているようにしたいと思っています。

 アクセスするたびに新作が公開されていれば、見てくれる人は増えると思います。

 他にもHIKAKINさんは、動画の長さについて、「1本の動画自体も3分から5分、長くても10分程度の長さにしています」と述べています。

 「長いほどいい」というものではないんですね。

 テレビのお笑い番組で芸人さんが披露するネタも、だいたい3分です。

 ブログの場合、適正な長さがどれぐらいなのかは分かりません。

 でも、読者は忙しい毎日の中で「何か面白いこと、役に立つことはないかな」と思ってブログを見てくださっているので、無駄に長く書くのではなく、サクサク読めるようにしてあげたいものです。

 今回は、更新の頻度や1回分のボリュームについて、考えてみました。

 もちろん、最後は内容勝負。

 中身が面白ければ、じわじわとアクセスは増えていくはずなので、希望を捨てることなく、ブログでアクセス数を伸ばしていきたいですね。

 それが、来るべきプロデビューへのステップとなることでしょう。

 

 

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その16】人気作の分析

 「本の内容を2ページごとに1行でまとめる」

 (岡田斗司夫『頭の回転が速い人の話し方』フォレスト出版

 

 岡田先生は、人気作家・宮部みゆき先生の240ページの本を、120行にまとめてみたそうです。すると、著者の宮部先生が「どのように読者を振り回そうとしているか、手練手管がすべて見えた」のだと述べています。

 これは、「リバースエンジニアリング」みたいなもの。たとえば、敵の優秀な戦闘機を捕獲し、バラバラに分解して内部構造を調べてみる。すると、どうやって優れた性能を実現しているのかが分かり、こちらの技術力が上がるという、そんな作業です。

 世界中の映画監督は、だいたいこうした訓練をやっているそうです。

 小説家も、気の利いた人はやっているとのこと。

 ハリウッド映画の傑作や、日本の傑作アニメなどの映像を、1分ごとに1行で表現するのもいい。こうすると、何度も見た映画でも、気づかなかった発見がたくさん出てくるというのです。

 僕も、ちょっとやってみます。

 いま手元にある、日向夏先生の痛快ミステリー『薬屋のひとりごと』(主婦の友社)の第1巻を、2ページごとに1行にしてみましょう。

 こんな感じです。

 

◇薬草を探しに森に出かけた薬師の娘・猫猫は、人さらいによって後宮に売られた。

◇そばかす顔の猫猫は下女として真面目に働き、そのうち後宮を出るつもりだ。

◇だが後宮で乳幼児の連続死が起き、先代の側室の呪いだとの噂であった。

◇呪いだとは思わない猫猫は、同僚の下女から、帝の子たちの症状を聞く。

◇調査に乗り出した猫猫は、女が、別の女を罵っている場面に出くわす。

 

 冒頭の10ページを、2ページあたり1行で要約してみました。

 僕がまとめたあらすじは、日向夏先生の芸術的な筆致とは似ても似つきません。それでも、宮中で起こる事件に主人公の猫猫が関わっていくようすが分かりますね。

 このあと、あんなことや、こんなことがあって、すごいイケメンの若き宦官との出会いもあってと、事態がどんどん進んでいきます。続きが気になる方は、この小説『薬屋のひとりごと』をお読みになるか、大人気となっている漫画版やアニメ版をご視聴ください。

 めっちゃくちゃ面白いですから。

 『薬屋のひとりごと』の場合、主人公の猫猫がすぐに登場。ひどい境遇に置かれているが、未来に希望を持っていることが語られます。しかし、そこに不審な事件が持ち上がり、猫猫は首を突っ込むことになります。そこで、2人の女が争っている緊迫した場面が描かれます。

 10ページぐらいで、完全に読者を物語の世界に引きずり込んでいます。

 「それからどうなるの?」という興味で、読者はページをめくるのです。

 こんな感じで、300ページを10ページぐらいに短縮すると、プロの「技」が見えてくるわけです。

 こんな作業を真面目に繰り返していたら、そうでない人と比べて、物語づくりの能力がアップするだろうということは、想像がつきますね。

 自分が読んで面白いと思った小説・漫画・映画を要約しながら、ストーリー展開の面白さを学び、自分のものにしていきましょう!

 

  

 

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その15】映画の大量視聴

 まず心を耕さないといけない。

 (藤田和日郎『読者ハ読ムナ(笑)』小学館

 

 『うしおととら』などで知られる藤田先生は人気漫画家であると同時に、アシスタントを次々にプロデビューさせてきた方です。『烈火の炎』の安西信行先生、『美鳥の日々』の井上和郎先生、『ムシブギョー』の福田宏先生、『金色のガッシュ‼』の雷句誠先生といった、アニメ化された人気漫画の作者たちは藤田先生の元アシスタントです。ほかにもプロとして活躍している人がいます。

 藤田先生は、どんな魔法を使っているんでしょうか?

 その秘密を余すところなく公開したのが本書です。

 僕なりに理解した秘密の第一は、「アシスタントに対して教育者のような愛情を持っておられること」でしょう。「アシスタントであるキミと仕事しながらしゃべっていても楽しいけど、外に出ていって漫画家やってるキミとしゃべれるようになったときが、一番楽しいんだからな」。こう藤田先生は考えているのです。

 秘密の第二は、「仕事中に映画を見て、感想を言い合うこと」。見るのは藤田氏おすすめの作品だったり、アシスタントが好きな作品だったりします。もちろん漫画を描く作業と同時並行なので、耳で聴きながらチラチラと見る。でも面白い場面では、みんなの手が止まってしまうこともあるそう。そして、1本の映画が終わると同時に、みんなで映画の評価を言い合うのです。アシスタントは週4日ぐらい仕事場に通うから、年間では、すごい量の映画を見ることになるわけですね。しかも、「この場面はこうしたらもっと面白くなるはず」などと語り合うわけですから、漫画家として即戦力になるために必要な「物語づくりの引き出し」ができていく。漫画家というのは、原作者を付けでもしないかぎり、「絵がうまい」というだけではなれません。自分でストーリーを考え付くためには、映画を通じて大量のセリフと絵をインプットすることが大事なんですね。

 秘密の第三は、「新人が描いて持ち込んだ作品を編集者からボロボロに酷評されても、藤田先生や仲間が支えてくれること」です。たとえば、新人が編集者に「お前は女の子と付き合ったことがないだろう。お前の書く女の子は魅力がない」と言われたら、藤田先生は、こんなふうにアドバイスするのです。「編集者が言わんとしていることは、キャラクターの掘り下げ、具体的なエピソードのあるある感だ。ほかの映画や小説で十分勉強できること。キミが女の子と付き合ったことがないのは、しかたないでしょ? 体験がないから描けないなんて言ってたら、おれは妖怪退治なんかしたことないけど、妖怪退治漫画で20何年食ってんだから」と。

 編集者から作品を否定されたときは、反論しないでいいから「確認」しろ、と藤田先生は言います。「かっこいいやつが戦って、負けもしないで最後まで勝つから面白くない。一回負けさせろということですよね」などということを確認し、次回は、その部分を改善したものを編集者に見せればいいのだと。

 いやあ、漫画家になるのは大変ですね。

 でも、正しい方向性で頑張れば道は開けるのも事実。

 藤田先生は言います。うちの仕事場から出た漫画家に「天才なんてひとりもいなかった。みんな自分の中にある、ほんのちょっとの才能を一生懸命大切に大切に育てて、それで、ものになったんだよ」と。

 小説家やエッセイストになりたい人も、本や映画を大量にインプットしましょう。そして、書いたものを応募する。結果的に酷評されても、それを「改善のための提案」と受け止めて、もっと良い作品をつくろうではありませんか。僕はこの本を読んで、そう言われているように感じました。

 

 

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その14】新人賞に挑戦

 日本は世界で最も作家デビューしやすい国です。

 (冲方丁冲方丁ライトノベルの書き方講座』宝島社文庫

 

 なぜかと言えば、多彩な新人賞があるからです。その気になって探せば、応募先はたくさんあります。

 自作の小説やエッセイを出版社に送っても、実は読まずに捨てられていることが多いそうです。編集者は多忙ですし、しろうとの人から突然おくられてきた原稿を丁寧に読んで、返事をする時間はとれないし、また、その義務もないわけです。

 だから、締め切りを守り、規定に合った原稿なら必ず目を通してもらえる新人賞応募は、それだけでもデビューにつながりやすいと言えるでしょう。

 とはいえ、いきなり原稿用紙何百枚ぶんの原稿を書くのは難しいですよね。

 この本では、人気作家である冲方丁先生が、具体的な練習メニューをあげてくださっています。

 たとえば、「四コマ漫画を小説化する」という練習法。

 四コマ漫画は起承転結があって、絵とセリフから成り立っています。

 これを文章だけで表現してみるのです。

 「適当に膨らませてつなげれば自然と小説になったりしますので、お試しください」と冲方先生は述べています。

 一つやってみましょう。

 大正から昭和初期に描かれ、日本の四コマ漫画の始まりとも言われている『ノンキナトウサン』(麻生豊)という作品があります。丸顔に丸メガネ、団子鼻のトウサンが、ちょっとまぬけな言動をするというギャグ漫画で、映画化もされるなど、当時たいへん人気があったようです。ちなみに現在では著作権が消滅して、パブリックドメインとなっています。

 

 題名『小説版 ノンキナトウサン』「ニシンの巻」

 「またニシンか」。トウサンと坊やはちゃぶ台を囲んでため息をついていた。

 そのとき、小包が届いた。

 包の中は食べ物らしい。「ありがたい。これでニシンを食べなくて済むゾ」。

 開いてみると、大量のニシンだった。

 

 他愛もない内容ですが、いちおう、掌編小説(短編小説よりも短い作品)が、ひとつできました。私は小説家ではありませんが、小説らしきものが一応、できたわけです。

 でも、ニシンって、そんなにまずいのかな?

 おばあちゃんからもらった「ニシンのパイ」を「いらない」と言ったアニメ『魔女の宅急便』の女の子のことを思い出しました。あれって、けっこう美味しそうですよね?

 すみません、話を戻します。

 書店に行くと、映画を元にした『小説版 ゴジラ-1.0』などといったノベライズ本がありますが、四コマ漫画を「原作」にすれば、誰でも、かんたんにノベライズができるわけです。

 こういう練習を大量にやっていくとどうなるか。

 物語の作り方が分かってくるようになるのです。

 四コマ漫画を小説にすれば「学べること甚大」だと冲方先生は述べています。

 ぜひ、やってみてください。

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その13】図書館通い

 何か調べ物をしよう。

 (アラン・エプスタイン『今日一日、「自分の人生」の楽しみ方』三笠書房

 

 著者は心理学博士。お金をかけずに、すぐできて、心豊かに過ごせる方法を教えてくれています。内容の一部を紹介しましょう。

 

◇目標を書こう。

◇犬と遊んでやったり、猫をなでてやろう。

◇何かすばらしいことを想像しよう。

◇冷蔵庫や食品の棚を片づけよう。

◇背中合わせに誰かと座り、自分のことを話してみよう。

◇日誌をつけ始めよう。

◇今日やることをリストにして、やり終えたら消していく。

 

 世の中には、お金のかからない楽しみもけっこうあることに気づきます。

 「公共図書館に行ってみよう」という提案も載っています。

 図書館には、たくさんの雑誌が入っています。静かな館内で、ゆったりと座って無料で読めるので、トクした気分になりますね。

 映画や音楽も視聴可能。

 自分が知らない本がたくさん所蔵されている。

 ちょっとした楽しいイベントをやっていることもあります。

 家に書斎がない人は、図書館を書斎だと思えばいい。

 土日の一方は図書館に出かけて、読書や調べ物をして帰ってくるのを習慣にするといいですね。

 休みの日は、僕もよく妻といっしょに図書館に行きます。

 僕は気に入った本は買って読み、本棚に並べる派で、「まえがき」から「あとがき」まで、すべての行を読むことにしているのですが、図書館では、調べ物を中心にしています。

 「文章術」に詳しくなりたいと思ったら、関連本を座席でパラパラとめくりながら、心にひっかかってくるフレーズを手帳にメモしています。

 ルーズリーフの上段に、題名・著者名・出版社名を書き、印象的なフレーズを箇条書きのように書き写せば、その本の「自分にとって必要な部分」だけを持ち帰ることができるのです。

 かかるお金は、ほぼゼロ。

 借りてすらいないので、返しに行く手間もありません。

 サーッと流して読み、気になる部分だけをメモするため、1冊にかける時間は20分ぐらいだったりします。

 図書館から出るときは、知識という戦利品を持って出るので、充実感があります。

 書き留めておくことで、後からパソコンで打ってA4のレジュメを作ったり、ブログのネタにしたりできるところがいいですね。

 ノートに書くというアナログな手作業を通すことは、記憶への定着が良くなるメリットもあるので、おススメです。

  作家になるには図書館を利用しない手はないと思います。主婦の方などで、平日の昼間に時間がとれるような場合には、特におススメです。

 

 

 

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その12】いちばん書きたいのは何か?

 一生に一度、たったひとつの物語しか書けないとしたら、なにを書くのか。

 (野村美月下読み男子と投稿女子ファミ通文庫

 

 これは小説のなかの言葉。

 平凡な高校生の青は、出版の仕事をしている朔太郎から、アルバイトを頼まれる。それは、ライトノベル新人賞の「下読み」であった。有名作家が選考するのは最終審査だけで、応募された大量の原稿は、まず「下読み」の人たちによって「一次選考通過」か「落選」かに選別されるのだ。青は応募作を丁寧に読んで、ボツ作品にも親切に助言。やがて青が「A」をつけて上げた原稿は受賞確実だと社内で評判になっていった。

 そんなある日、青は応募原稿のなかにクラスメイト・氷ノ宮氷雪の名を見つける。氷雪は透き通る白い肌と冷たい瞳を持つ、知的な美人だ。いつも冷静で、“氷の淑女”という印象の、近寄りがたい存在だった。だが氷雪の原稿は『ぼっちの俺が異世界で、勇者で魔王でハーレム王』という残念なタイトル。チープな擬音語や巨大フォントがやたら出てくる、ぶっとんだ作品だった。

 氷雪に直接何かを伝えるわけにはいかない。高校生の青が下読みをしていることや、氷雪の原稿を読んだことは秘密にすべきことだからだ。ところが学校で氷雪が書きかけているトンデモ原稿を男子が見つけてしまった。このままでは氷雪が笑いものにされてしまう。青は「それ書いたのおれだ」と、彼女をかばった。

 このことがきっかけで、青は自分が下読みをしている事実を打ち明ける。すると、「一度でいいから一次を通過したい」と切望する氷雪に頼まれ、放課後、次回作執筆のアドバイスをすることになった。2人は、だんだんと距離を縮めていく。

 これはフィクションですが、下読みを通して青は「ダメ原稿」の共通点を次のように感じています。

 

 言葉足らずな文章、強引な展開、性格がころころ変わるキャラクター、延々と続く無駄な会話。

 

 これは実際、そうでしょうね。

 これを逆転させると、優れた小説の条件にもなります。

 良い小説には「適切な状況説明、自然な展開、性格に一貫性のあるキャラクター、過不足のない会話」が備わっていると言えるでしょう。

 青は「文章がシンプルで、単語の選択が的確で、頭にするすると入ってくる」ような原稿に出会ったとき、「この人は、うまい!」と感じています。

 作家志望、文筆家志望の人は、この小説を読むと勉強になるのではないでしょうか。

 さて、冒頭の一文は、放課後、他の生徒が来ないような喫茶店で氷雪と2人きりとなった青が、彼女にアドバイスした内容です。

 青は氷雪を、こう誘導します。 

 

 ノートと筆記用具を出して。今から五十数えるから、そのあいだに、氷ノ宮さんが一番書きたいことを、箇条書きしてみて。どんなことでもいいから。ひとつでも多く。

 

 これは、僕たちにも今すぐできる方法です。小説でも、エッセイでも、どんな文章でも使えるテクニックでしょう。

 時間制限は3分。

 「自分が本当に書きたいこと」を紙に書き出す。

 それが、あなたが書く作品の「中核」になることでしょう。

 

 

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その11】短い言葉で心をつかむ

 たった1行の言葉で、それまでさほど売れなかった物が、爆発的に売れていくことは実際にあるのです。

 (川上徹也『1行バカ売れ』角川新書)

 

 著者はコピーライター。短いフレーズで人の心をつかむコツについて、豊富な事例をあげて解説しています。たとえば、この事例。僕なりに要約して紹介しましょう。

 

 ニューヨーク・マンハッタンにある博多料理専門店「トントン」。メニューに博多名物明太子を「タラのたまご」と書いて載せたら、別々のお客から3件「気持ち悪い」と苦情が出たそうです。しかも、注文していないお客から。でも、お客様の要請には応えたいと、次のように書き換えたそうです。

 

 「博多スパイシーキャビア

 

 とたんにバカ売れ。「うまい。これはシャンパンに合う」と大人気に。

 これを読んで以来、僕も家族も、明太子を「博多スパイシーキャビア」と呼ぶようになりました。

 さらに事例を。

 北海道北見市にある「北の大地の水族館」は、水槽の表面が凍ってしまうのが最大の弱点であり、悩みでした。ところが、次のように宣伝したのです。

 

 「世界初! 凍る水槽」

 

 最大の弱点を逆手にとって、凍った水面の下での魚の様子を見られるようにしたわけです。これによって一大観光スポットになったのでした。

 東京・上野にある「二木の菓子」では、ある時、全店舗で「あんドーナツ」に次のようなPOPを付けたところ、どの店舗でも、飛ぶように売れたとか。それは、

 

 「今となっては素朴でも、昔はこれが贅沢だったんだ!」

 

 高齢のお客さんが共感してくれたようです。

 ところが、ある1店舗では全然売れなかった。調べてみると、その店舗では店員さんがPOPを自分の判断で書き直していました。それは、

 

 「昔懐かしい味、今も昔も変わらぬ贅沢を」

 

 あれ? こっちのほうが、なんだか上品でマイルドですよね。

 でも、売れなかった。

 なぜでしょう?

 それは、「表面的な建前」であり、お客にとっては「自分と関係のない情報だ」となって、少しも響かないからです。

 この本では、「バカ売れ」のために「得することを提示する」「常識の逆を言う」「重要な情報を隠す」など、さまざまな技法を取り上げていて勉強になります。

 ブログの文章でも、何かの応募作でも、読者が「自分に関係あることだ」と思ってくれたり、何らかの「驚き」を感じてくれたら、読んでもらいやすくなるでしょう。

 プロのコピーライターさんが書いた本を見かけたら、1冊は読んでおいて損はないのではないでしょうか。