tadashi133’s diary

実用エッセイや、趣味のエッセイを連載。

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その24】自分自身が読みたい作品なのか

 「とにかく、自分が読みたい作品を書いてみる」

 (岬 鷺宮『読者と主人公と二人のこれから』電撃文庫

 

 この作品の「あとがき」に、作者の岬先生が、こう記しています。あらすじを紹介しますね。

 

 他人との関係に後ろ向きな細野晃(ほそのあきら)。彼にとっては高校入学式後の最初のホームルームでの新しいクラスメイトたちの自己紹介にそれほど関心はない。自己紹介が進む間も、彼は1冊の小説を見返していた。それは何度も読んだ愛読書で、題名は『十四歳』とあり、主人公は14歳の少女・トキコである。彼は、友人など作らない、トキコの物語を読んでいれば他には何もいらないとさえ考えていた。

 自己紹介は出席番号順だ。晃の番になる直前、なんだか印象の薄い女子が壇上に立った。

 彼女はこう名乗った。

 「柊時子(ひいらぎときこ)です」。

 小説の主人公と同じ名前だと思った晃は、壇上の時子を見て、時が止まったような錯覚に陥る。

 物憂げに伏せられた、黒目がちで切れ長の目。

 ボブヘアーの黒髪と、細い首筋。 

 彼の手の中にある『十四歳』の表紙に描かれた「トキコ」とそっくりだったのだ。

 姉がいて、中学では文芸部で、ヒスイの髪飾りをつけていて…という細かい点まで同じ。そして何より、どこか気高く寂しげな気配が、トキコそのものだ。

 でも、小説のヒロインが現実世界に出てくるなんて、ありえない。

 そうと分かっていながらも、その後、晃は時子に「昔の文学とか好きそうだよね」と話しかける。小説のトキコがそうだったからだ。

 小説の知識をもとに話しかける晃だったが、時子は急に晃の手を引き、校内の人気のない場所に引っぱっていった。

 「……読んだの?」

 時子は、『十四歳』は彼女の姉が書いた小説であること、主人公のモデルは自分であることを告げた。でも、恥ずかしいので、このことは内緒にしてほしいと頼んできたのだった。

 出会うはずがなかった「読者」と「主人公」。2人はこれから、どうなるのか。

 

 こんなお話です。

 設定に意外性があって、いいですね。

 ファンタジーでもないのに、小説のヒロインと現実に出会えるなんて、すごく興味をそそられます。しかも晃にとって時子は理想の女の子なんですから。

 それで今回、僕が言いたいのは、この物語は、まず岬先生自身が読みたいと思う作品だったということです。

 だからこそ、読者にとっても、読みたい作品になるのです。

 人間の感じ方というのは、そう大きくは違わないものです。

 作った本人が食べて美味しいと感じる料理は、お客さんが食べても美味しい。

 だから、「こんな本があったら読みたいな」「こんな小説があったら、ワクワクして読めるのになあ」と思うことがあったら、そういう作品を自分で書いてみましょう。

 マーケティングというか、世間の人の好みを調べるというのも大事ですが、自分の好みに徹底してこだわるというのも、一つの方法です。

 岬先生は「あとがき」で、本作は電撃小説大賞に応募したものの、1次審査落ちした作品だったという事実を明かしています。他の作品でデビューした後、クオリティを高めて、みごとに本として刊行できたわけです。

 だから、結果はどうであれ、文学賞やコンクールに応募するのは、いいことですね。

 1次審査にも引っかからなかったとしても、チャレンジしている以上「0点」ではないわけです。

 その賞の入選基準が80点だとすると、5点なり10点なり、点数は得ています。もしかしたら79点だったかもしれない。

 その後も書き続けて腕を磨けば、過去の落選作の「光っている部分」を膨らませ、失敗した部分を改善することができます。

 当ブログの前回【その23】で取り上げた松岡先生は、「2作目が書けない作家は少なからずいる」ことを指摘しています。デビュー作が生涯唯一の作品になってしまうことも多いので、2作目、3作目が出せるよう、いくつかの作品をストックしておくことは大事です。

 「毎年1篇は、どこかの文学賞に応募する」という目標を立てて、頑張ってみてはどうでしょう。そうすれば、何年後かにデビューできた時点で「手を加えれば本になる作品のストックが他にも何本もある」という状態をつくることができるでしょう。

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その23】空想して書く

 本書でご紹介するのは、小説家で「食べていく」のではなく「儲けて富を得る」方法です。

 (松岡圭祐『小説家になって億を稼ごう』新潮新書

 

 いやもう、ちょっと引いてしまうぐらいドギツイ言い方ですが、実際、著者の松岡先生は『万能鑑定士Q』『高校事変』などのミリオンセラーをいくつも出しています。現実に年収が億を超えている「富豪作家」なのです。

 どうすれば、そんな小説が書けるのでしょうか。この本のなかで松岡先生は「秘伝」とも言うべき方法を公開してくれています。

 それは、「想造」という技法です。

 私なりに要約すると、「何人かの俳優の写真を印刷し、そこに名前・職業・特技・性格といったプロフィールを書き添え、壁に貼っておく」というやり方です。そして、人物の行動を空想する。無理に物語を作ろうとせず、何日もかけてイメージしていく。すると、登場人物たちの人間関係に波乱が生じるので、波乱を乗り越えるすべを、人物たちといっしょに考えよう、というのです。

 ほんとにそれで優れた小説が書けるのかと疑問に思う人も多いでしょう。天才作家の松岡先生だからこそできるのだろうと。確かに、誰もが億を稼ぐ作家になれるわけではないでしょう。しかし、この技法の有効性が、ある大学で次々と実証されていることを知りました。

 ウェブサイト「日藝ラプラス」の記事によると、日本大学藝術学部文藝学科の青木敬士先生は、ゼミの学生たちに「適当に自分の好きなキャラクターの絵を7枚ぐらい印刷して壁に貼り、その『見た目だけ』を利用して、その人物がどんな人物かを自分勝手に書きかえていく」方法を勧めているそうです。

 その際、「最初から彼ら7人の関係性やストーリーを絶対に考えない」で「あくまでも一人ひとりを考えていく」ことを勧めているというのです。すると、自然に「この人とこの人が、こんなシチュエーションで一緒にいたら、こんな会話が生まれるかも?」という発想が浮かぶ。それをどんどん転がしていくと、小説が書けるのだそうのです。これは「ミステリ作家の松岡圭祐さんも勧めている方法ですが」とことわったうえで、青木先生は、上記のように説明しています。

 その結果、何が起きたか。青木ゼミからは2020年、『サンタクロースを殺した。そしてキスをした』という小説で小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞して犬君雀さんがデビューしました。2022年には『スター・シェイカー』でハヤカワSFコンテスト大賞、『きみは雪をみることができない』でメディアワークス文庫賞というダブル受賞で人間六度さんがデビューを果たします。しかも同年、『完璧な佐古さんは僕みたいになりたい』で山賀塩太郎さんがファンタジア大賞銀賞を受賞してデビューしたのです。

 「教え子がメジャーな賞を受賞してデビューする」なんて、1人出るだけでもすごいことですよね。それが立て続けに3人。青木先生の指導力と生徒の皆さんの才能もあったと思いますが、「松岡メソッド」の有効性が証明されたと言えるでしょう。

 青木先生は授業で、次の2つの事を特に強調しているとか。

 

【1】「そのキャラクターから見えるもの以外書くな」

【2】「説明するな。具体的に描写しろ」

 

 この2つです。

 作者は作品世界の設定をすべて分かったうえで書いている「神様」なので、登場人物の1人から見えている世界というものに鈍感になりがちです。そうなると読者は作者の「作為」を感じる。「すでにある予定表をなぞらされている」と読者に思われたらオシマイなのです。

 同じことについて松岡先生のほうは、『小説家になって億を稼ごう』の中で実例をあげて説明しています。

 

◇身勝手な人だ、と莉子は思った。だが小笠原自身は、特に気にしていなかった。

◇身勝手な人だ、と莉子は思った。黙って小笠原をじっと見つめる。まるで意に介さない表情がそこにあった。

 

 どっちがいいでしょうか?

 そうです。

 上が「悪い例」。下が「良い例」です。

 「悪い例」では、莉子からは見えるはずもない、「小笠原が自身の身勝手さを気にしていないこと」を作者が強引に「説明」しています。

 「良い例」では、莉子に見えることだけを書いて、結果的に小笠原の無反省さを読者が感じるように「描写」しています。

 小説を書いてみたいと思う人は、「想造」の技法を試してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その22】ライターに向く人・向かない人

 主婦で副業ライターをしている方もたくさんいますし、それで給与以外の報酬として月数万円の収入を得ています。シニアでも取り組みやすく、60歳を超えてはじめた人もいます。

 (藤木俊明『「書く仕事」のはじめ方・稼ぎ方・続け方』同文舘)

 

 「書く仕事」は有望な副業。著者は30年間、「書く仕事」で生計を立てています。

 現在はネットのおかげで、作品の受注から納品までがネット上で完結できるため、ノートパソコンさえあれば、書く仕事は基本的に在宅でできてしまいます。

 パソコン一つで、月に数万円稼げたら嬉しいですね。

 フリーランスライターの中には、年収1000万円の人もいるそうです。

 開業するのに技術も資金も不要。

 その後の努力と工夫で年収を増やしていけるのがライター業です。

 では、「誰でも簡単に」できるのか?

 残念ながら、そうではありません。

 「書く仕事」に向いている人と、向いていない人がいます。

 著者が言う「書く仕事に向いている人」を3つあげてみます。

 

【1】自己管理ができ、締め切りを守る人

【2】精神的に安定している人

【3】得意分野がある人

 

 まず【1】ですが、原稿には必ず締め切りがあるので、守らなければいけませんね。要求される品質を満たした原稿を、編集者の想定している期日よりも少し前倒しに納品できるライターさんは、重宝がられ、仕事の依頼が途切れません。

 次に【2】ですが、編集者の指示や助言に感情的に反発しがちな方は、「商品としての文章を書くこと」には向いていないでしょう。鉄道会社の仕事では、文章の中に「脱線」とか「事故」とかいうワードがNGというところもあるそうで「話が脱線しましたが…」という比喩もダメだったケースがあるそうです。そういうとき、芸術家タイプの方は「絶対に自分の考えを押し通す」というふうになるかもしれません。僕も「脱線という言葉が出るぐらいいいじゃないか、そこまで神経質にならなくていいのに」とは思います。ただ、そこを柔軟に「話がそれましたが…」と書き直せる人の方が、ライターには向いているでしょう。

 最後の【3】ですが、これについては当ブログ「作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密【その8】」で述べましたので、未読の方は、ぜひご覧いただければと思います。要するに単なる「ライター」ではなく「〇〇ライター」になるということです。「フードライター」とか「トラベルライター」など専門化をはかると、仕事を頼まれやすくなります。とはいえ「フードライター」も山のようにいるので、もっと絞り込んで「町中華ライター」「レトロ喫茶ライター」などであればもっと良いでしょう。そして、得意な分野を複数持つようにして、芸域を広げていくことです。ちなみに著者の藤木先生は「副業評論家」を名乗っているそうです。

 どうやって仕事を得るかですが、ネット上にはライター募集の案件がたくさんあるので、そういうものに応募するのが一般的です。いろいろなメディアのホームページの問い合わせフォームに自分のポートフォリオ(実績やスキルをアピールするための自己紹介文書)を送ったりして仕事を得た人もいます。

 仕事を依頼され、実際に文章を書く際には、自分なりのテンプレートを用意して、それに合わせて記事を書くのも悪くない方法です。本書で紹介されているのは、次のようなテンプレです。

 

【1】近ごろ、こんなことがあるようです。

【2】調べてみると、こんなことがわかりました。

【3】やはり、これは本当のようです。

【4】ただし、こういう意見もあります。

【5】ちょっとしたオチや、意見。

 

 ある分野についての専門性を高めつつ、テーマについて、上記のような書き方で記事をまとめていくのもよいでしょう。 

 読者にとって楽しい息抜きになったり、「勉強になった。自分もやってみよう」と思えたりする記事が書ければ、ライターとしての実力がついたということになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その21】続ける技術

 続けるのが大の得意です。

 (樺沢紫苑『極アウトプット』小学館

 

 YouTubeで月数十万円以上稼ぐのは国内で4000人以内の人気ユーチューバーだそうで、著者はそのうちの1人です(登録者数26万人・1649位)。そればかりか精神科医であり、34冊の本が累計160万部も売れ、15年間メールマガジンを毎日更新、10年間Facebookを毎日更新、さらに7年間YouTube動画を毎日更新し続けている。そして1万人以上の人々を前に講演をするプロの講演家でもあるという、化け物級の「アウトプットの達人」です。

 本書で言う「アウトプット」とは、「話す」「書く」「行動する」の3つ。

 著者は、これを普通の人には信じられないぐらい継続してきたわけです。

 もちろん「無」から「有」は生まれません。インプットがあればこそのアウトプットです。著者が行なっているインプットは「年間100本の映画鑑賞」「年200冊以上の読書」「週5回のジムでの運動」「年間6週間以上の旅行」だそうです。

 だから、著者の行動を僕たちが真似するのは困難だし、著者にはもともと優れた才能があったとも言えるでしょう。

 でも、著者はこう言っています。

◇打席に立たなければ、ヒットもホームランも打てません

◇他人ではなく、「過去の自分」をライバルにしましょう 

 なるほど、野球では打順が回ってこなければ打席に立てませんが、「はてなブログ」の執筆なら、自分さえその気になれば何回でも打席に立つ(=執筆する)ことができます。すごい人と自分とを比べて落ち込んでいても何も変わらない。とにかくバットを振り、過去の自分よりも1歩でも2歩でもいいから前進しよう、ということです。

 僕たちブロガーが、「過去の自分」に絶対に負けないことが1つだけあります。

 それは、累計アクセス数です。

 打率には不調・好調の波がありますが、「これまでに打ったヒットの数」は絶対に減らないのです。

 著者は「続けるのが得意」です。これこそが著者の成功の要因だと思いますが、本書では続けるための3つのコツを公開してくれています。

【1】「とりあえず今日だけはやる」

【2】「目標を細分化する」

【3】「結果を記録する」

 この3つです。

 まず【1】は、運動したくない気分の日も、「とりあえず今、5分だけやろう」と思って実行するということ。

 次に【2】は、「5キロやせる」のが目標なら、「1カ月に500グラムやせる」という形で、10カ月かけて達成する。

 最後の【3】は、ダイエットしたい人が毎日自分の体重を記録するとうまくいきやすいのと同じで、毎回、結果を記録することです。

 著者はYouTubeのフォロワー数を毎朝必ず記録しているそうです。フォロワー数の増減は管理画面から一覧できますが、わざわざ手書きでノートに記録することで、やる気を高めています。

 僕も真似をすることにしました。僕の場合は、「はてなブログ」のダッシュボードから見ることができるアクセス数を記録します。前日のアクセス数と、累計アクセス数を書いています。

 そのときに便利なのが、手帳のはじめのほうにある「YEAR PLANNING」のページ。見開きで1年が表になっており、日付の横に5~6文字ぐらい書き込める小さなスペースがあります。人によって「大切な人の誕生日」を書き込んだり、「その日の体重」を書いたりしているようです。また「〇〇文学賞締め切り」などの大事な予定を書き込んでもいいですが、僕の場合は、アクセス数を書いて眺めています。

 広い世の中で、自分の書いたブログを、たった1人でも見てくれたらうれしいものです。「はてなスター」をつけてくださる方や、読者にまでなってくださる方もいて、本当に感謝しています。

 そういうことを励みにしながら、「小さな成功」を確認し、延々と継続していきたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その20】読者優先で書く

 発信力は、一生使うことができる「あなただけの資産」になります。

 (きぐち『ブログで5億円稼いだ方法』ダイヤモンド社

 

 学歴もスキルもなし。コンビニを解雇された著者が5億円もの大金をブログで稼いだ方法を伝授してくれている、すごい本です。

 著者のきぐち氏は高校卒業後、大学進学も就職もせず、18年間ずっとブロガーとして生きてきたそうです。最初はコンビニのアルバイトをしていましたが、唯一の収入源であったバイトも、バックヤードでサボっているのが見つかり、クビになってしまいました。そこでブログで稼ごうとしたのですが、母親は自由にさせてくれたそうです。

 最初の3年間は1円も稼げませんでした。

 そこで、ブログに役立つと思われる勉強を開始。月収1000円を達成します。

 7年目には年収1000万円。

 さらに収入を伸ばし、ついに年収1億円を達成。母親に仕送りをし、恵まれない人々への寄付もする成功者になりました(自分がお金持ちになるだけでなく、他の人々を助けようとされているところが素晴らしいですね)。そして、一流出版社から本を出し、著者としてのデビューも果たしたわけです。

 もちろん、誰もがすぐに真似できることではないでしょう。18年も前からやり続けてきた「先行者利益」はあります。ただ、僕たち後発の人でも、別の意味でメリットはあるということを、きぐち氏は教えてくれています。

 「後発組」には「成功者のたどった正解ルートをたどれる」という大きなメリットがあるのです。その証拠に、きぐちさんが小学校からの友人にブログのやり方を教えたところ、約1年で月50万円のブログ収益を稼ぐまでになり、その収益でマンションを購入、今では不動産経営もしているそうです。

 当ブログは、「儲ける」ことがメインではありませんので、きぐち氏のブログ運営ノウハウの詳細については、この『ブログで5億円稼いだ方法』をお読みいただきたいと思います。ブログ初心者の僕には意味すら分からない高度なテクニックや、ネット上で使える便利なツールについても本書では解説されています。

 ただ、「どんな記事を書けばアクセスが手に入りやすいか」について、いろいろと実践的で分かりやすいアドバイスが載っていて、勉強になりました。

 僕なりにまとめてみます。

 

【1】自分が専門性を持てそうなジャンルを扱う

【2】検索ボリュームの多いキーワードを参考にする

【3】コンテンツを充実させる

 

 こんな感じです。

 まず【1】ですが、美容部員をしている人なら美容系のブログを、不動産関係者なら「安い引っ越しのやり方」を、出版関係者だったら「文章の書き方」を発信すると効果的だということです。自分の職歴や体験談を交えて書ける人は強いのです。僕も「高校の国語教員」なので、主として国語に関係した内容を扱うことにしています。

 次に【2】についてですが、Googleの「キーワードプランナー」を使うことをきぐち氏は推奨しています。ただ、難しいと感じる人は単に検索窓に言葉を入れた時に自動表示されるキーワードを見てもよいと思います。

 たとえば、あなたがブログで「引っ越し」について発信したいとすると、「引っ越し」という言葉を検索窓に打ち込むと、検索候補として「引っ越し 見積もり」「引っ越し やること」などの言葉が自動表示されます。

 これは、世間の多くの人が「引っ越し」について知りたいこと、関心が強いことは何であるかを示しています。「引っ越し やること」だったら、引っ越しの手続きや作業で必要なことが知りたいというのがユーザーの検索意図だと思われるので、引っ越し手続きで必要なことを一枚にまとめたチェックリストを記事にするといった発想が出てきます。文章術系ブログであれば、「作家になるには」と検索すると「作家になるには 本」「作家になるには 年齢」などという候補が表示されることがあります。それを見て、多くの人が「作家になるために役立つ書籍の情報」を求めているのかな、とか、「自分はもう40代や50代だから、作家にはなれないのだろうか」と思っている人が多いのかな、とか推測し、そういう人々のニーズに合った情報を発信してみようというふうになるわけです。ブログのネタに困ったら、キーワード検索から「読者の役に立つコンテンツ」を発想してみると良いでしょう。

 最後に【3】ですが、ブログ運営に関して「とりあえず100記事書け」という考えについて、きぐち氏は「強い効果があると思います」と述べています。

 もちろん、内容の薄いコピペ記事を量産しても無駄です。読者が読みたくなる記事を書こうと心がけ、コンテンツを充実させていくことで、「キーワードの組み合わせ」が増えていき、自分がまったく狙っていなかったキーワードからもユーザーが訪問してくれるようになるからです。

 アクセス数に一喜一憂することなく、地道にコンテンツを積み重ねていくことが大事なのですね。

 

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その19】取材して書く

 ギャルの人に取材をしたり、九州に住む人に方言の取材をしたりと準備を万端にしました。

 (桜目禅斗『あなたを諦めきれない元許嫁じゃダメですか?』スニーカー文庫

 

 「祝重版出来‼」と帯にあったので購入したライトノベル

 あらすじを紹介しましょう。

 

 福岡県の田舎町に住む小学生の男子・天海七渡(あまみななと)は、同じ学年で幼馴染の女子・城木翼(しろきつばさ)と仲が良かった。ところがある日、2人の親たちが七渡と翼を許嫁にすると突然、宣言したのだ。このことで、かえって気まずくなった七渡は、翼から距離を置くようになってしまう。その後七渡は東京へ引っ越すことになり、小5の春に2人は離れ離れになったのだった。大泣きしながら手を振る翼に、七渡は何の言葉もかけてあげられなかったのである。

 東京で中学生になった七渡は、綺麗な外見だが周囲から恐れられ、浮いていた女子・地葉麗奈(ちばれいな)と仲良くなる。七渡は麗奈を親友だと思っているが、麗奈のほうは……。その後、七渡と麗奈は同じ高校に進学。クラスも同じになる。だが、そのクラスには福岡から進学してきた1人の女子がいた。それは翼であった。やがて七渡と翼は許嫁であることが、クラスのみんなにバレてしまう。

 

 こんなお話です。

 鈍感な七渡をめぐって、翼と麗奈の間にバチバチの火花が散ることになるのは言うまでもないことですが、僕がここで言いたいのは、三角関係の結末ではありません。

 作者の桜目先生が、この小説を書くにあたって、冒頭に掲げた言葉(この小説の「あとがき」に書かれています)のように、「取材」を行なっているということです。

 ギャルの人に話を聞き、九州の方言を教えてもらうといった準備をすることで、2人のヒロインの描写にリアリティを与えているのですね。

 自信を持って描写できない人や場面があったら、ネットや図書館で調べるのはもちろん、詳しい人に聞いてみましょう。頭の中で漠然と想像して書くのと、実際を知って書くのでは大きな違いがあります。

 そういう意味では、はじめて小説を書く方は、できれば主人公の通う学校や職業は自分の通った学校、自分の職場をモデルにするのがおススメです。そうすれば、自分の体験そのものが小説の取材になります。デパートに長年勤めてきた人だったら、ふつうのお客さんには分からない、デパートの内部事情が分かるので、そういうことを散りばめて書くと、読者には面白いわけです。

 また、常日頃から電車内や店内、公園などで、そこにいる老若男女の様子や言葉を観察し、ネタ帳にメモしておくのもいいと思います。

 

 

 

 

 

 

作家になりたい人へ プロデビュー26の秘密 【その18】プロの読書量を知る

 四十冊の本をインプットしつつ新書を一気に書き上げた。

 (晴山陽一『知的生産のためのすごい!仕事術』青春出版社

 

 プロはどれぐらいの本を読んで、本を書くのでしょうか? 作家・英語教育研究家として多数の本を出している晴山先生は、「四十冊の本を読みながら二十日で本を書いた」ことがあるそうですが、デスクの前に40冊を並べると同時に、サイドには、執筆の参考になりそうな50冊を積み上げたそうです。これによって、ベストの知的空間ができたとのこと。

 このように、ほぼ100冊の関連書を資料として使うと、そのテーマに関する本が書けると言われています。

 雑誌『ダ・ヴィンチ』(2020年1月号)で、ライターの北尾トロ先生は、自分の読書量を明かしています。資料的なものを除き、仕事がらみも含めると「100冊前後だろう」とのことで、これは「ライターという職業を考えれば、ごく平均的な量」じゃないかなというのです。

 文筆業の人は、年100冊ぐらいのインプットをしているのが普通なんですね。

 多いですね。でも「絶望的なほどの神業」ではないでしょう。

 週2冊ですから、がんばれば、できそうな数字です。

 「作家になりたい」と思うほどの人なら、よほどのブラック企業に勤めているのでないかぎり、「ダラダラとテレビを見ている時間」や、「スマホでゲームをして雲散霧消している時間」を読書にあてれば、できるはずです。

 僕たちはふつう、雑多な分野の本を興味関心に従って読んでいます。それでいいのですが、本を書くとなると、「特定の分野に関する本」を意識的に読んでいくことも大事だろうと思います。

 週2冊で年100冊ですが、1週間に読む2冊のうち1冊は、絞られたテーマ、たとえばの話ですが、「勝敗」というテーマで読んでいく。戦国武将や剣豪の本、三国志の英雄についての本や第二次大戦の戦記もの、経営者の自伝やビジネス戦略の本など、とにかく「勝敗」が出てくる書物を週に1冊は読むということになりますと、2年後には「歴史に学ぶ勝利の鉄則」とか「滅亡の条件」といったテーマの本を書くだけの材料が蓄積されることになります。

 片づけ・収納・スリム生活などの100冊を読みながら、日々、その内容を実践した主婦の方は、そういう方面の本を書く資格が出てきます。

 1冊の本の中から3つぐらい、興味深いエピソードや言葉などをカードに書き抜いていけば、2年後には300枚のカードが完成します。

 そのカードを並べ替えれば、本の構成ができます。

 だいたい300枚ぐらいのカードがたまると、軽い本が1冊ぐらい書けると言われているので、やってみてはいかがでしょう。

 かかる費用は、そう大きなものではありません。

 古本屋さんには110円均一のコーナーがあります。

 名刺サイズの情報カードも、200枚で110円だったりします。

 トータルで1万円ぐらい投資すれば、きちんとした入門書のような本が書けてしまうんですね。